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築地市場の移転で問題になっているベンゼンって何?

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この記事の所要時間: 758

ひとつの化学物質が、
世の中を大きく揺るがすこともあります。
例えばベンゼンです。

高校の化学で登場する
基本的な物質ですが、
今、東京都というか
日本全体を大きく動かしています。

つまり
日本の胃袋を支える築地市場の移転が、
ベンゼンの有無によって
白紙に戻されるかもしれない
からです。

2020年の東京オリンピックへも
少なからず影響しそうです。
そこでベンゼンとは何か、
何が問題なのかを調べてみましょう。

ベンゼンとは

ベンゼンは、分子式で表すとC6H6
極めて単純な化合物です。

つまり
炭素と水素がそれぞれ6個ずつ
組み合わさっているだけ
です。

常温では無色の液体、
独特の甘い香りがするため
芳香族炭化水素と呼ばれます。

燃えやすく、また水には溶けません。
逆に脂肪などの有機化合物を溶かすので、
有機溶媒として利用されます。

沸点は80度、エタノールに近いですね。
炭素が多いので、
空気中ではすすを出してよく燃えます。

言い換えると
引火性が高いので、
危険な物質
でもあります。
一方で融点は5.5度、
冬は扱いづらいかもしれません。

ベンゼンの歴史

初めてベンゼンを発見したのは、1825年、
電磁気学で有名なファラデーです。

安息香酸benzoic acidから得られたため、
1833年にベンゼンと名付けられました。

1845年に
コールタールからの単離に成功し、
工業生産が可能になります。

1855年、
ベンゼンに様々な関連化合物が
あることが分かったので、
芳香族というグループが
考えられるようになりました。

なおベンゼンの構造が分かったのは
1865年、化学者ケクレによってです。
故に独特の化学的形状を
ケクレ構造と呼ぶこともあります。

ベンゼンの構造

ベンゼンは炭素と水素からできています。
この炭素が直線的につながっていれば、
いわゆる脂肪になります。

しかしベンゼンは、
炭素が環状につながっています。
ここが化学の不思議?
面白いところであり、
結合状態が重要です。

なおこのような仕組みを
ベンゼン環とも呼びます。
化学嫌いの人を増やす、
いわゆる亀の甲(六角形)構造です。

それぞれの炭素の先には
水素が1つずつ結合しています。
そのため物質的には安定しています。

もちろんベンゼン環には
二重構造の部分がある!

不安定ではないのか?
ちょっと化学を知っている人は
疑問に思います。

とはいえ実際には、
どこが二重構造になっているか
固定されていません。
逆に単結合との違いが不明瞭なので、
エネルギー的には安定です。

ミクロの世界は、
人間にとって
窺い知れないことが多いようです。

ベンゼンの応用範囲は広い

ベンゼンは、
応用範囲の広い化学物質なので
多くの製品に利用されています。

例えば水素ひとつを塩素と置き換える、
この反応を置換(ちかん)と言いますが、
かつてDDTに使われていた
クロロベンゼン
と呼ばれる物質になります。

対角線上にある水素2つを
それぞれ塩素で置換すると
ジクロロベンゼン
これは今でも売られている、
臭いが強烈な防虫剤の成分になります。

また水素ひとつをメチル基CH3
置換したものがトルエンです。
トルエンは
ペンキや接着剤に用いられており、
独特の臭いがあります。

さらにニトロ基NO2で置換すると、
ニトロベンゼンです。
こちらは頭痛薬でもお馴染みである
アセトアミノフェンの原料になります。

ちなみに1つのメチル基、
3つのニトロ基で置換すると、
2,4,6-トリニトロトルエン
略してTNT
つまり爆薬になってしまいます。

どうやって作るのか

工業的にも有用なベンゼンは、
どうやって作られるのでしょうか。
炭素と水素の化合物
である点からわかるように
石油が原料となります。

基本的に炭素化合物が
不完全燃焼することにより発生
します。

どちらかというと、
ベンゼンは副産物的に得られる分も多いです。

ちなみに
タバコや火事の煙にも含まれています。

一方で都市ガスの製造過程でも
ベンゼンが発生します。
今回、築地市場移転で
問題になっている場所も、
ガス工場の跡地です。

そのため
ベンゼンなどが地下に残っているのでは?
土壌や地下水の汚染が心配されています。

なお石炭を乾溜、
つまり空気を入れずに
180度以下で加熱分解すると、
軽油ができますが、
その中にベンゼンは含まれています。

同時に
トルエンやキシレンなども生成されます。
また500度に熱した
鉄の管に通してもベンゼンが作られます。

毒性はあるのか

ベンゼンは
人間に対する毒性
が知られている物質です。
付き合いが長くなるにしたがい、
様々なことが明らかになっています。

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1.法律で規制されています

ベンゼンは、発がん性がある
と考えられています。

そのため日本では労働安全衛生法、
消防法、環境基本法、水道法、
水質汚濁防止法、大気汚染防止法、
土壌汚染法、廃棄物処理法などなど、
数多くの法律によって含まれる
上限の基準が定めれています。

ベンゼンを作る、扱う工場などでは
この規制に従う必要があります。
もちろん何らかの施設を作る際にも、
参考にすべきなのでしょう。

2.短期的な毒性とは

とはいえ具体的には、
どのような症状が現れるのでしょうか。
まず短期的には、ベンゼンに触れた
眼、喉、鼻、口などに痛み感じます。

吸引すると
気管支炎や肺炎が生じる
可能性があります。

低濃度であれば倦怠感や疲労感、
頭痛などが現れます。

高濃度のベンゼン蒸気を浴びると、
いわゆる麻酔状態に陥り、
顔面や身体に化学的熱傷、
致命的な状況に至る事例もあるようです。

3.長期的な毒性とは

例えば、工場などで
継続的にベンゼンを吸引したことにより、
血液のがんである白血病に罹った事例が
1950年代にありました。

一方で昭和の時代、
不良たちが
「シンナー遊び」に使いました。
これはトルエンであり
直接のベンゼンではありませんが、
脳への障害、後遺症を残す危険性
が指摘されています。

なおベンゼンの問題点は、
鼻、口、皮膚、いずれからも体内へ入り、
容易に脂肪組織で蓄積されてしまう
ことです。
体脂肪内に溜まると
容易に分解されることはありません。
そして骨髄細胞を破壊し
免疫系に障害を起こします。

どうやって解毒するのか

どんな物質でも、
上手く使えば有用ですが、
間違えると危険です。

ではベンゼンを解毒することは
可能なのでしょうか。

上述したように、
ベンゼンは比較的安定した物質です。
置換反応は起きやすいですが、
何かを加える付加反応は
起きにくいようです。

そこで土壌汚染などがあった場合には、
どうしたらよいのでしょうか。

一般的には
土壌を入れ替えるしかありません。

ベンゼンを分解する微生物が発見
されていますが、
浄化には時間がかかるでしょう。

筑波大学で2014年に
ベンゼン環を引き裂く化合物、
置換シクロブタジエンが発見された?
英科学誌Natureに掲載されたようです。

とはいえ現状においても
実用的な手法は開発されていません。

一方で活性炭を使って
ベンゼンを吸着させる方法もありますが、
時間とお金がかかり、
広範囲であれば現実的ではありません。

化学物質に対する安全性が最優先です

築地市場の移転を止めるほどの力が
ベンゼンにあるのでしょうか。

もちろん移転を止めれば
巨額の費用がかかります。

逆に今まで使ってきた税金が
無駄になります。

オリンピックの開催にも
支障を来すかもしれません。

とはいえ上述のような性質が
ベンゼンにはあります。

それが残っている可能性のある場所に
市場を作ってよいのか。

数々の薬害が起こり、そのたびに、
二度としない!誓ったはずでは?
しかし薬害は繰り返されているのが
現状です。

お金では贖えない人命が
損なわれるリスクがあります。

安易に移そうとする人は、
ベンゼンを含めた有機溶剤について
深く知るべきです。

化学物質に対する安全性を
最優先すべきでしょう。
科学に対しては、謙虚な姿勢が大切です。


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たくと
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著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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