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遺伝子とは何か?運命なのか、変えることはできるのか

この記事の所要時間: 70

私たちは日常的に遺伝や遺伝子DNAなどの単語を口にします。
とはいえ正しい意味で使っているでしょうか。
もちろん会話であれば、お互い通じている限り問題ありません。
しかし実際の話として遺伝子は運命を伝えているのでしょうか。
変えることはできないのでしょうか。あきらめるべきなのか。

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遺伝子とはDNAがつながったものです

遺伝子とは、親から子へ伝えられる遺伝情報のまとまりを意味します。
その化学的な実態は、デオキシリボ核酸、つまりDNAという物質です。
ならばその構造は、どうなっているのでしょうか。

1.DNAの化学構造

リン酸、糖、塩基、この3つが結合した物質をヌクレオチドと呼びます。
そしてヌクレオチドが鎖状につながったものがDNAです。
細かく見ていくとリン酸は、生体内ならどこにでもあり、
エネルギーの生成や蓄積にも利用されます。
糖は、5個の炭素が環状につながった五炭糖のデオキシリボースです。
DNAでは塩基の部分が重要であり、4種類あります。
つまりアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)です。
後述するRNAでは、チミンがウラシル(U)に代わります。
言い換えるとDNAでは4種類のヌクレオチドがある!
このA、G、C、Tの並び方、すなわち塩基配列によってアミノ酸が決まり、
アミノ酸のつながり方でタンパク質が作られます。
人体で大きな働きをするホルモンの多くや酵素はタンパク質なので、
事実上は塩基配列、すなわちDNA如何で個人の身体、形質が決まります。
それがいわゆる遺伝子という概念につながるのです。

2.RNAとは

DNAに似た、ある意味では同等な物質にRNAがあります。
RNAは、デオキシリボース内の炭素、そのひとつに付いている水素Hが
水酸基であるOHに置き換わったリボースを糖として持ちます。
言い換えると、DNAはRNAと比べて酸素が一個足りない、
オキシジェン(酸素)がデ(de:除去)したからデオキシ!
RNAはリボ核酸、DNAはデオキシリボ核酸と呼ばれます。
酸素原子ひとつの差ですが、働きはまったく違います。
つまりRNAは直接的な遺伝子ではなく、
細胞分裂時など遺伝子のつながりである染色体を複製したり、
特定のたんぱく質を作る際、DNAの鋳型となって活躍するからです。
すなわちDNAが遺伝子の原本で、RNAはそのコピーというイメージです。

3.染色体とは

細胞の中に核と呼ばれる部分があり、その中に染色体があります。
染色体は、遺伝子の塊であり、細胞分裂の際に集まって形成されます。
すなわちDNAがつながった状態です。
ちなみに人間の細胞1つに入っているDNA全部を並べると4メートルになる!
それが46本の染色体に分けて束ねられています。
なお精子や卵などの生殖細胞は、減数分裂によって、
染色体数が半分の23本になります。
父から23本、母から23本、受精卵である子供は正しく46本になる計算です。

DNAを探る歴史

昔から、子供は親に似る!なんとなくわかっていました。
だから栽培植物や家畜を改良することができたのです。
例えば牛乳をたくさん搾れるメス牛と、そういう娘を作るオス牛、
両者を交配させることで、さらに乳量を増やすことができました。
そんな中、遺伝の法則でお馴染みのメンデルがエンドウ豆を使って
遺伝の仕組み、分離の法則、独立の法則、優性の法則を解明しました。
とはいえ時代は19世紀です。まだ化学的なことはわかりません。
そのため遺伝子ではなく要素elementという用語を使っています。
遺伝を司る物質がDNAだと判明したのは半世紀以上後1944年のことです。
そして1953年、ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を見出します。
ここから時代が大きく変わり、遺伝子の研究が急速に進むようになりました。

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人間の遺伝情報が2003年に解読された

科学者としては興味があります。医学的にも重要です。
とはいえ遺伝子を明らかにしても、倫理的に良いのだろうか。
神の領域に入る?パンドラの箱を開けてしまわないのだろうか?
ジレンマもあったようですが、科学的好奇心は止められません。
技術の進歩がそれを可能にしました。
塩基の配列、遺伝情報のセットをゲノムと呼びますが、
最初に解読できたのは1995年マイコプラズマ菌とインフルエンザ菌です。
大腸菌が1997年、遺伝実験に使われる線虫は1998年、マウスが2002年、
そして人間のゲノムが判明したのは2003年です。
一度やってしまえば、あとはガンの遺伝子などがわかるようになりました。
結果的に良かったのでしょうか。
医学の進歩には貢献しており、多くの患者さんが救われています。

たった3万個だけど組み合わせは無限

人間の遺伝子、すなわち塩基配列が明らかになりましたが、
意外なこともたくさんあったようです。
例えば塩基の数、ゲノムベースとも呼ばれますが、
人間は21億対です。しかしマウスは26億対であり人間より多い!
また人間とチンパンジーの塩基配列は、98%が同じ!
そして遺伝を司る重要な部分、いわゆる遺伝子と呼ばれる箇所は
人間で26,626箇所、一方でマウスは25,865箇所、大差がありません。
DNAレベルで考えれば、人間は高等だとは言い切れない?
とはいえ約3万個の遺伝子で、これだけ多様な人間ができるのか?
そこで1つの遺伝子が単独ではなく、複数が組み合わさることで、
ほぼ無限の状態を作り出すことが可能になったようです。
つまり理論的な組み合わせは、3万の3万乗になるからです。

遺伝子は変わらないのか

人間とチンパンジーの塩基配列がほとんど同じということは、
長い進化の過程において、遺伝子は変わっていない?
ならば遺伝子を運命と考えるべきなのでしょうか。
ここで進化とは、遺伝子の変化が次の世代に継がれ、種全体に広がることです。
前の種との間に明確な差が生まれ、それが固定されると、新しい種になります。
ネアンデルタール人は、私たちとは違う種のようですが、
そこから分岐した後も、人間に近い新種は登場していないようです。
黒人と白人、未開人と近代人も、交配すれば繁殖能力のある子が生まれます。
ただし進化までは至らない遺伝子の小さな変異、改変は頻繁に起きています。
その原因と指摘されるのは、紫外線放射線などです。
身体の中を通り抜ける際、細胞内のDNAにぶつかり塩基配列を乱します。
たった1つの塩基がずれるだけで、できるタンパク質が変わります。
それが生殖細胞内で起きれば、生まれてくる子供に異変が起きるかも。

遺伝子の発現は環境で変わる

遺伝子があれば、その発現は必然的、運命的なのでしょうか。
よく言われるのは薄毛の遺伝子です。若禿は避けられない運命なのか?
一方でがんの遺伝子も見つかっています。
こちらも例として用いられるのが、乳がんの遺伝子です。
薄毛の人には申し訳ありませんが、こちらは深刻です。命にかかわるからです。
ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんはそれを理由にして、
乳房や卵巣を事前に除去しました。
仕事や子育て、残された人生を考えれば賢明な選択なのでしょう。
とはいえ遺伝子の発現は環境で変わるとも言われています。
がんの遺伝子があっても、100%発症するわけではない!
生活習慣に努めれば、薄毛の家系でも進行を遅らせることは可能です。
そうした話は、エピジェネティクスとしても研究されています。

遺伝子を変えてはいけないのか

遺伝子は、受精に際して親から伝えられたものです。
顔や身長などの外見も、遺伝子が発現した結果です。
それを受け入れがたい人もいるでしょう。
特に生まれつきの病気などであれば、話は複雑です。
そんな中、新しい技術が登場し、遺伝子を人為的に変える?
組み換えではないから倫理的に問題はない?
議論が起きています。例えばゲノム編集と呼ばれる方法です。
自然に変わるのは許容して、人工的に変えるのはよくない?
そもそも自然ってなんだ?
時代と共に倫理観や価値観が変われば、整形も許容される?
遺伝子の整形も許容される日が来るのでしょう。

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たくと
たくと
著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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