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2016年ノーベル賞の内容をやさしく解説します

この記事の所要時間: 73

毎年10月最初の週は、ノーベル賞の発表があります。
今年も日本人の受賞者が生まれました。嬉しいことです。
とはいえ受賞内容は、いずれも難しそうです。
また何かの役に立つのか?疑問もありますね。
そこで2016年、理系ノーベル賞の受賞内容などを
わかりやすく解説してみましょう。

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生理学・医学賞

東京工業大学栄誉教授である大隅良典(おおすみ よしのり)さんが受賞しました。
大きな報道になりましたね。日本人が連覇しました。
受賞内容は「オートファジー自食作用)」です。
とはいえどんな仕組みで、どんな応用範囲があるのでしょうか。

1.歴代の日本人受賞者

日本人にとって難しい賞とも言われたのが、生理学・医学賞です。
最初に受賞したのは、1987年利根川進さんです。
抗体を生成する遺伝学的な原理を解明しました。
次は、そこから25年かかりました。まだ記憶に新しい2012年です。
今後が期待されるiPS細胞で受賞した京都大学の山中伸弥さんです。
そして昨年の2015年、大村智さんが感染症の治療法で受賞しました。
日本にはまだまだ受賞の可能性を秘めた先生たちがいます。
医学という分野なので、私たちに最も密接な話ですね。

2.原理

大隅さんが受賞したオートファジーの原理について、
簡単に言えば、細胞内のリサイクル作用です。
つまり細胞内で不要になった、または過剰になったものがあると、
特殊な膜を作り出し、それで包み込んでしまいます。
大隅さんが最初に研究した酵母では、それらを液胞内に入れ、
分解して、必要な蛋白質などを合成します。
一方で私たちのような動物の細胞には液胞がありません。
しかしリソソームと呼ばれる微小な細胞組織が
特殊な酵素を使って膜と融合し不要物を分解する、
それを材料として必要な蛋白質を合成して再利用します。
基本的にほぼすべての細胞にオートファジー機能はあります。
これがあるからこそ、数日食事をしなくても死ぬことはないのです。
例えば一般的な大人は毎日200グラムのタンパク質を必要としますが、
食べ物から得ているのは70グラムしかないとか。
それ以外は、オートファジーによって補っているようです。

3.役に立つのか

医学分野なので、直ぐに役立ってほしい気もしますが、
オートファジー機能は両面において期待されています。
まず第一には、同機能を活発化させる方法です。
例えば病気になるということは、この機能が低下した結果とか?
オートファジーを促せば、細胞も健康になるようです。
そこからパーキンソン病などの神経系疾患
または脂肪肝や糖尿病など生活習慣病の治療に役立つとか。
もう一方は、この働きを抑制する方法です。
つまりがん細胞にもオートファジー機能があります。
同機能を阻害すれば、がん細胞は衰えていく?
さらに適応可能な病気の範囲が広がると考えられています。

物理学賞

ちょっとわかりづらいのが物理学賞です。
物理というだけで拒絶反応起こす人も多いですね。
日本のお家芸ともなりつつありますが、2016年は残念!

1.歴代の日本人受賞者

日本人で最初にノーベル賞を受賞したのが物理学賞です。
1949年、戦後がまだ続く時代に明るいニュースでした。
湯川秀樹さんが「中間子の理論」で受賞しました。
そして1965年に朝永振一郎さん「場の量子論」がテーマです。
さらに1973年、江崎玲於奈さんが「トンネル効果」で受賞です。
ちょっと時間が空きましたが、
2002年小柴昌俊さんが「ニュートリノの観測」で、
2008年は小林誠さん、益川敏英さん、南部陽一郎さんの3人が
「量子的な対称性の破れ」で同時受賞です。
2014年「青色発光ダイオード」で赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さん
翌2015年、梶田隆章さんが「ニュートリノ振動の発見」で受賞です。

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2.原理

物質のトポロジカル相とトポロジカル相転移の理論的発見
ちょっと意味不明な内容が2016年のノーベル物理学賞です。
少しずつ説明していきましょう。
まずは電気抵抗がゼロになる超電導現象での話です。
そもそも私たちの周りにある世界は、摩擦などの抵抗があります。
とはいえ絶対零度と呼ばれるマイナス273度に近づくと、
電気抵抗がなくなることが知られています。これが超電導です。
このような不思議な現象がなぜ起きるのか、まず理論的に解明しました。
一方で磁石の性質をトポロジー(位相幾何学)で明らかにします。
なおトポロジーとは、数学の一分野であり、形の変形に関する話です。
わかりやすく言えば「8」「日」「円」は同じ形をしている?
磁石というのも不思議な性質を持っており、
高温にすると磁力を失いますが、低温にすると磁力が戻ります。
これが相転移であり、ここで磁石と超電導が結びつきます。
ただし今回の受賞理由では、これとは異なる相転移を発見し、
この際の電子、いわゆる電気の流れをトポロジー的に解明しました。
つまり電子が冷やされて磁力が与えられた際、電子がどのように動くか?
それをトポロジーを使うことで予測できたということです。

3.役に立つのか

もちろん素人にはわからない内容です。
そのためでしょうか、テレビや新聞などでもほとんど解説していません。
わかりやすく説明できる人は、本当に少ないのでしょう。
去年一昨年と日本人が受賞した物理学賞とは、ちょっと違います。
では実用性はないのでしょうか?
しかし専門家の間では、現象として既に知られていたことです。
それを理論的に解明したことで、応用が進むと考えられています。
例えば新しい電子材料や部品の開発、
将来的には量子コンピュータの実現に貢献すると期待されています。

化学賞

応用化学は日本のお家芸ですが、
それを象徴するような内容で、日本人も多く受賞しています。
とはいえ今回は、基礎化学の分野で受賞です。

1.歴代の日本人受賞者

日本人が最初に化学賞を受賞したのは、1981年福井謙一さんです。
化学反応の過程を理論的に解明しました。
次が連続しました。導電性高分子の発見により2000年白川英樹さん、
キラル触媒の不斉反応?2001年野依良治さん、
そして質量分析の研究で2002年田中耕一さんです。
田中さんは民間の技術者として珍しいタイプでした。
ちょっと飛んで2008年、緑色蛍光蛋白質の発見で下村脩さん、
2010年には有機合成の方法で根岸英一さんと鈴木章さんが同時受賞しました。
5年ほど空いたので今年は期待されていましたけどね。

2.原理

2016年の化学賞は、分子マシンの開発です。
つまり分子レベル、いわゆるナノサイズで動く機械を開発しました。
ナノサイズとは、1ナノメートルが10億分の1メートルです。
それだけ小さいので、もちろん人間が直接触ることはできません。
とはいえ自然界には存在しています。分子モーターと呼ばれています。
例えば筋肉に様々な物質を届けるモーター蛋白質などです。
高校生物の参考書などにも記述があります。ご参照ください。
今回の受賞理由は、それを人工的に作る、実際に動かしたことです。
知恵の輪みたいな構造を動かす分子エレベータの作成に成功しました。

3.役に立つのか

直ぐに何かで役立つのか?基礎科学の難しい点です。
しかし分子マシンの成功は、もちろんナノテクノロジーに貢献します。
外科手術に代わる手法を提供するかもしれません。
一方で超小型コンピュータへの応用も期待されています。
さらにごく少量のエネルギーで動かすことができるので、
より大きなサイズの機械に対する理論的な適応も可能です。
応用こそが日本のお家芸ですから。

今後は心配でもあります

2000年以降は、日本人の受賞が目立っています。
とはいえここ10年程度がピークかもしれません。
というのも、バブル経済が崩壊して以降、
若手研究者の置かれている現状に厳しいものがあるからです。
すなわち国も企業も、基礎研究十分な予算を配分していません。
数年の任期で首を切られる研究者が少なくありません。
基礎研究は10年単位で考える必要があります。
2020年東京オリンピックの後、いろんな面での失速が心配です。

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たくと
たくと
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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