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豊洲の地下水から高濃度のベンゼンが検出された?想定される3つの理由

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2017年1月14日、多くのテレビニュースや当日の夕刊が速報的に伝えました。それは築地市場の移転先である豊洲市場地下水モニタリング調査の結果です。なんとベンゼンが「基準値の79倍」だったそうです。報道のネタとしては面白そうです。
参考「築地市場の移転で問題になっているベンゼンって何?

ただし今回の結果は暫定値です。またどこも具体的な数値を示していません。これでは客観的な報道と言えるのか?勇み足で終わらないことを祈りたいですが、この騒動について若干の解説をしてみましょう。

具体的な結果は報道されていない

東京都が公表したとされる地下水モニタリング調査の結果について、翌日の朝刊やウェブニュースを含めて具体的な数値に関する報道は一切ありません。東京都側も暫定値だからでしょうか、ウェブサイトなどでも公表していないようです。

とはいえベンゼンは基準値の79倍!センセーショナルな新聞の見出しがあります。またあってはならないシアンが検出されたとか。化学や法律を知らない人であれば、これだけでショックを受けるでしょう。実際に市場関係者も激怒しています。

環境基準は4通りある

環境基準とは言いますが、厳密には4通りあります。

  • 直接口にする場合の飲用基準
  • 井戸水が該当する地下水
  • 空気である大気
  • 土壌に関する基準

それぞれ安全性に対する考え方が全く異なります。分けて考える必要があります。

1.飲用基準

まずは水道水に対する基準です。水道法第四条において水質基準が決められています。つまり毎日飲み続けても安全なための数値です。ちなみにこちらは厚生労働省の管轄です。
厚生労働省|水質基準項目と基準値(51項目)

例えばベンゼン、ヒ素、シアンはそれぞれ1リットル当たり0.01ミリグラム以下、水銀は同0.003ミリグラム以下でなければならないと定められています。言い換えると、基準以下であれば入っていても良いのです。

2.地下水

次は地下水に関する基準です。こちらは環境省の管轄であり、環境基本法第十六条で定められている、いわゆる環境基準と呼ばれるものです。今回の数値で比較された基準と思われます。
環境省|地下水の水質汚濁に係る環境基準について 別表及び付表

例えばベンゼンとヒ素は1リットル当たり0.01ミリグラム以下、水銀は同0.0005ミリグラム以下、シアンは「検出されないこと」と定められています。

ちなみに注書きとして、上記基準は年間の平均値とする。ただしシアンは最高値。また「検出されないこと」とは決められた測定方法における定量限界を下回ること。すなわちゼロではないのです。間違えてはいけません。

3.大気

続いて大気の環境基準です。つまり空気中で許される範囲です。こちらも環境省が管轄ですが物質によって細かい法律が異なります。まずベンゼンは環境基本法第十六条であり、年平均値が立方メートル当たり0.003ミリグラム以下であることです。
環境省|大気汚染に係る環境基準

次に水銀は、大気汚染防止法に規定があり、年平均値として立法メートル当たり40ナノグラム以下です。こちらは世界的な水銀に対する危機意識が高まっていることもあり、2016年9月に同法が改正されています。

4.土壌

盛土がなかった!もう忘れられているかもしれませんが、土に対しても環境基準が決められています。こちらも環境省の管轄であり、法律は環境基本法第十六条です。
土壌環境基準 別表

例えばベンゼンとヒ素は、検液1リットルにつき0.01ミリグラム以下であること、水銀は、同0.0005ミリグラム以下、そしてシアンは、検液中に検出されないこと。それぞれ決まっています。

突然高濃度になった理由とは

今回突然高濃度の数値が出てきました。ちょっと不思議ではありますが、考えられる可能性について検討してみましょう。

1.地下水が攪拌(かくはん)されて上昇した

前回の調査を含めて、地下水の水位調整用ポンプを動かし始めた時期とも重なります。それによって地下深くにあった有害物質が攪拌され上昇したのではないか?専門家の意見が見受けられます。その可能性は大きいでしょう。

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もちろん今出たからよかったのでしょう。知らないで移転後に大きな問題になれば、豊洲市場の信頼性が揺らいでしまいます。考え方によれば、どんどん攪拌し続ければ、いつかはなくなるのでしょう。それまで移転を延期すべきか。

逆に攪拌すれば半永久的に出続けるとの説もあります。盛土をあえてせずにモニタリング空間を作っておいたことが、結果的に吉と出るのかもしれません。

2.雨が少なかったので濃縮された

前回から今回までの間、降雨量が少なかったので地下水が濃縮されたのではないか、そうした専門家の見方もあるようです。実際に日本海側では大雪に見舞われていますが、東京が位置する太平洋側は典型的な冬型の天気、乾燥した晴れが続いていたのは事実です。

とはいえそう簡単に数値が変動して良いのでしょうか。ならばかつても冬季に測定していたはずですが、その際には異常値が見つかっていません。この違いをどのように判断するのか。

もちろん土壌や地下水に含まれている物質が徐々に濃縮されていく、つまり水分の蒸発量の方が多いと考えられるからです。分母が小さくなれば、比率である基準を上回ってしまう可能性は否めません。

3.過去のデータは正しかったのか

小池知事に変わった前回の調査結果から、怪しい数値が出るようになりました。不思議です。まったくの偶然と思いたいですが、実態はどうなのでしょうか。

一説によると調査会社が変わったとか。とはいえそれが原因なのであれば、客観的な調査ではないですね。調査方法自体が法律で決まっているはずだからです。手法を違えるのであれば相応の理由が必要だし、結果を調整すべきです。

ちなみにかつて調査会社にいた経験から言ってしまえば(もう時効だと思いますが)顧客にとってマイナスになるデータは出せない?上司に言われた記憶がなくもないです。役所の圧力はありました。上司が謝罪のために飛んでいったことを覚えています。

逆もありそうです。今回の調査に何らかのミスがあった可能性も否定してはいけないでしょう。もちろんあってはならないですが、何らかの意図が働いているとしたら、大変な問題です。

報道のあり方は正しいのか

東京都がデータを公表したのが1月14日です。当日のテレビ、ネットニュース、そして翌日の新聞各紙、それぞれ具体的な数値を掲載していません。単に「基準の79倍」センセーショナルに報道するだけです。しかしそれは正しい方法なのでしょうか。

もちろん素人に細かいことを言ってもわからない!そういった気持ちもあるのでしょう。とはいえ環境基準がどの程度で、今回出てきた数値はこのくらいです。そうした具体的な数値を出すべきでしょう。あくまでも判断は国民に任すべきです。

一方で国民に任せたらポピュリズム?イギリスのEU離脱やトランプ現象みたいになると言いたいのでしょう。そこまで国民はバカなのか?逆にバカにしてよいのでしょうか。報道のあり方、日本のジャーナリズムを問い直すべきでしょう。

築地は安全なのか

百歩譲って豊洲は危険なのかもしれません。であれば築地は安全なのでしょうか?筒抜けの構造をしてます。衛生上の問題はないのか。そうした検証をしたからこそ、豊洲へ移転する!決めたはずです。

もちろん東京ガスの跡地を使うという根本的な問題もありますが、何を持って安全と言えるのか?街中を歩いていても、有害ガスを吸っているかもしれません。タバコの煙はどうですか。
参考「受動喫煙の規制を強化!今度は罰則も伴うようです

日本が先進的な民主国家でありたいなら、誰もが科学的、客観的に判断する、その材料を提供すべきなのでしょう。隠したり、都合の良い数字だけを出す報道は、かつてのSTAP細胞の騒動を非難できないでしょう。

風評被害を防ごう

現時点で豊洲へ市場を移転したとしても、風評被害は否めないでしょう。政争の具にせず、真摯に対応すべきです。築地は日本の台所であり観光資源です。それを豊洲が引き継ぐからです。

とはいえ漁夫の利を得た別の市場や流通経路が伸びてくる可能性もあります。そうして世の中が転換する、新しい時代が生まれることも否定すべきではないでしょう。

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たくと
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著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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