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臨床研究・他人のiPS細胞を使った加齢黄斑変性治療の患者を募集開始!

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この記事の所要時間: 756

iPS細胞を使った再生医療が安くかつ早くできるようになりそうです。現状では1億円かかると言われる治療費が100分の1程度に下がると予測されています。とはいえ遠い未来ではありません。2017年から治験が始まります。

iPS細胞はノーベル賞をとった技術です。ただし未知の部分も少なからず存在します。これをうまく活用できるか。これからの研究にかかっています。そこで現状と今後の課題についてまとめてみましょう。

iPS細胞とは

iPS細胞とは、人工多能性幹細胞induced pluripotent stem cellの略です。

ちなみにcellは細胞ですので、この部分は日本語表記します。とはいえ素人には意味不明です。

1.開発の背景

トカゲの尻尾を切れば再生してくる。これはよく知られた事実です。しかし人間を含めた哺乳類ではありえない?とはいえ切り傷は、数日経てば修復されます。不思議だと思いませんか。思った人は、科学者としての資質ありです。

基本的に同一個体の中にある細胞はすべて同じものです。簡単に言うと、私の身体にある細胞、約60兆個あると推計されますが、それはすべて同じDNAを持っています。理由は、一つの受精卵から分化したためです。

人間として生まれた後は、腕なら腕の細胞として、皮膚なら皮膚の細胞としてしか働きません。これも不思議な話ですが、これまでの研究では、足の細胞を採取して手に貼り付けても、足が生えてくることはありませんでした。

そこに衝撃が走ります。つまり1996年に体細胞を使ったクローン羊ドリーが生まれたからです。生物学における常識がひっくり返りました。哺乳類でも細胞が再生、リプログラミングされることがわかったのです。

2.iPS細胞のしくみ

羊にできることは人間にできないのか?既に技術として人間のクローンを作ることはできます。クローン技術によるペットの再生?は外国で行われています。とはいえ人間で実際にやろうとすると、倫理面などが面倒です。

一方で研究は続いています。普通の体細胞へ多能性誘導因子と呼ばれる特殊な遺伝子を導入することにより、受精卵のように様々な細胞へ分化する能力を付与することが可能になりました。これをリプログラミングと呼び、できたものがiPS細胞です。

リプログラミングに関しては高校生物の教科書にも記載されています。1962年イギリスのガードンが、アフリカツメガエルを用いた核移植実験によりクローンの作成に成功しています。iPS細胞の生みの親である京都大学の山中伸弥教授は、ガードンと共に2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

なおiPS細胞をもっと詳しく知りたい方は、下記サイトを参照してください。
京都大学iPS細胞研究所CiRA|iPS細胞とは?

3.幹細胞との違い

iPS細胞の話をするとES細胞、すなわち幹細胞が登場します。これとどう違うのでしょうか。

ES細胞とは、胚性幹細胞Embryonic Stem Cellの略です。こちらもiPS細胞と同じく多様な組織へ転換できる能力を持っています。

とはいえ名前からわかるようにを使います。これも面倒な議論ですが、受精卵は人間なのか?そういう意味で、ES細胞の利用に際しては倫理規定があります。この点が、基礎研究には使えるけど実用化が進まない理由と考えられています。

4.STAP細胞との違い

2014年の年明け早々物議を醸したのがSTAP細胞です。

こちらは刺激惹起性多能性獲得細胞Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cellsの略です。

細胞の発生過程に酸性物質などの刺激を与えることによりリプログラミングされると考えられていました。

 

もちろんご承知の通り、幹細胞が紛れていたのではないか?そうした話で落ち着いたようです。当人以外は誰もSTAP細胞を作り出すことができませんでした。再現性のない技術は、科学ではありません。

正しい方法とは言えなかったようですが、科学者は時に異端扱いされます。こちらも負けずに研究を続けてほしいとは思います。メンデルもダーウィンも、そしてアインシュタインも、初めは相手にされなかったのですから。

他人の細胞が使えるようになる

2017年2月7日の報道によれば、他人のiPS細胞を利用した治験(臨床研究)がスタートするようです。つまり健康な人の細胞からiPS細胞を作り、常備しておく!献血みたいなものでしょうか。メリットやデメリットを合わせて考えてみましょう。

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1.メリットは何か

2014年9月に理化学研究所(理研)などが中心となって行われた加齢黄斑変性に対する手術は、患者さん本人の細胞から作製したiPS細胞でした。もちろん安全面を考慮したからです。とはいえ後述するようなリスクを冒してまで他人の細胞を使う理由は何でしょうか。

(1)安くなる
第一の理由は、安価にiPS細胞を供給できることです。

一説によれば、最初の事例ではiPS細胞の培養などに1億円のコストがかかったとか。しかし今回の手法が確立すれば、効率的に作れるため数百万円にまで下げられるみたいです。

 

もちろんお金で命は代えられませんが、それでも医療費が高騰する現状は何とも避けたいでしょう。基本的にお金がかかる治療法には健康保険が適用されない可能性が大きくなります。すると金持ちだけが得をする技術になります。

一般則として技術が普及することでコストが安くなります。これは医療に関しても同じことです。そのために初期段階では高くなる!仕方のないことです。それでも値段を下げる努力は続けるべきでしょう。

(2)常備できる

研究の初期だから当然ですが、これまでは患者さんのためにiPS細胞を準備しました。とはいえ患者さんが見つかってからiPS細胞の培養を始めるので、必然的に時間がかかります。最初の事例では10カ月かかったようです。

一方で健康な人の細胞を使って事前にiPS細胞を常備しておけば、そこから1カ月程度で治療に使えるようになります。

極めて画期的です。患者さんにとっても安心できます。将来的には普通の傷薬のようになるでしょう。

 

(3)倫理的な問題はない

上述のようにES細胞では、他人の受精卵を使うため倫理的な問題がありました。とはいえiPS細胞は体細胞を使います。そのため倫理規定などはクリアされます。

もちろん無制限もしくは勝手な利用はいけませんが、

当人了承の上でストックするのであれば、献血と同じ原理です。

人助けにもなりそうです。

 

2.デメリットは何か

これまで良い話ばかりしてきましたが、当然ですがiPS細胞にはリスクもあります。そのため研究が進んでいるようで進まないのです。具体的なデメリットも上げてみましょう。

(1)拒絶反応が怖い

再生医療に関する材料は、基本的に自分の細胞を利用します。理由は、拒絶反応が心配されるからです。人体には、自分以外のタンパク質を拒絶する免疫作用があります。これが過敏に働くと、アレルギー反応になります。

iPS細胞であっても拒絶反応の対象になります。そのため最初の患者さんについては、自身の細胞から培養しました。一方で臓器移植が行われています。理論的には拒絶反応を防止する手法が確立されています。

現状では重篤な拒絶反応の心配はないようですが、研究を進める過程で何が起きるかわかりません。一例毎に慎重な対応が求められます。

(2)がん化の恐れも捨てきれない

こちらも研究当初から指摘されたことです。つまり人工的に作った細胞ががん化しないのか?もちろん初期段階ではリスクが高かったようです。とはいえ問題ないレベルになったからでしょう、ノーベル賞が受賞できたのです。

それでも油断は禁物です。そもそもがんが起きる仕組みは、完全に解明されているわけではないからです。現在の抗がん剤などで見られるように副作用が起きてしまえば、何のための治療かわからなくなってしまいます。

(3)人的ミスもある

2017年1月24日、違った意味で衝撃が走りました。山中伸弥京大iPS細胞研究所所長による謝罪です。

つまりiPS細胞を作製する過程において、試薬を取り違えた可能性があったからです。基本的には問題ないとされていますが、ミスはいけません。何かのトラブルが起きてしまえば大変なことになるからです。

もちろんiPS細胞に限ったことではありませんが、薬害はなくなりません。また製薬企業における虚偽も多々発覚しています。そうしたことで研究が滞らないように、細心の注意が求められます。

どこまでお願いするか

iPS細胞を含めた再生医療が発達したら、永遠の命が得られるのでしょうか。どこまで入れ替えたら自分ではなくなるのか?脳を再生しても自分でいられるのか?SFとの境界はどこにあるのでしょうか。

自分や家族が病気になった時にどこまで治療をお願いしますか?費用の問題もありますが、健康な間に相談しておくべきかもしれません。

関連リンク

理化学研究所|「滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植に関する臨床研究」の研究開始について

神戸市立医療センター中央市民病院|滲出型加齢黄斑変性に対するiPS細胞由来網膜色素上皮細胞に関する臨床研究

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たくと
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著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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