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厚労省はゲノム編集の研究を規制するのか

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この記事の所要時間: 77

日本経済新聞2017年4月8日の報道によれば、厚生労働省はゲノム編集を使った遺伝子治療の指針を改定するようです。

具体的には受精卵を使った研究を事実上禁止するとか。

とはいえ罰則規定はないため、民間レベルでは研究が進むかもしれません。

遺伝子治療とは

遺伝子治療という話をよく耳にしますが、どのようなことなのでしょうか。

簡単に言えば、遺伝子を操作して先天性疾患などを治していく方法です。

例えば生まれつき特定のタンパク質を作れない人がいます。
つまり当該タンパク質を作る遺伝子がない、もしくは異常になっているケースです。
そのままでは病気になり一生障害を抱えて生きることになります。
そこでベクター(運び屋)と呼ばれるウイルスなどを使って患者さんのDNA(デオキシリボ核酸)を変えていきます。

技術的には確立していますが、100%成功するわけでもありません。
また費用も巨額に上ります。
研究に参加するなど何らかの補助を得ないと、一般の患者さんが簡単に受けられる治療法ではありません。

ただし将来的にはパーキンソン病やアルツハイマー病なども治せるのではと考えられており、期待が高まっています。

ゲノム編集とは

遺伝子治療の最新技術がゲノム編集です。

これまでとはDNAを変えていく精度が違います。
ほぼ思い通りに修正できるほどの確実性があります。
もちろんそれは両刃の剣でもあります。

ちなみにゲノムとは、生物が持つ遺伝子のセット、DNA配列を指す用語です。

実際の治療に使われるゲノム編集は、カリフォルニア大学のダウドナ教授、そしてマックスプランク感染生物学研究所のシャルパンティエ所長らが2012年に開発したクリスパー・キャスナインCRISPR/Cas9)と呼ばれる技術を使います。
2人は近いうちにノーベル賞を受賞するのでは?
高い評価を受けています。

これはもともと古細菌などが持っていた免疫システムと考えられています。

つまりウイルスなどが侵入してきた際、それを分解して撃退する一方で、大切なDNAだけはもらいましょう!

そうした技術です。

そんな都合の良い話はあるのか?
疑いたくなりますが、生物の進化には驚くべきものが多くあります。
そもそも人体の仕組みだって出来過ぎていると思いませんか。
それでもまだまだ生物は不思議だらけです。

ゲノム編集における課題は何か

さまざまな分野への応用が期待されるゲノム編集ですが、手放しで喜んでよいのでしょうか。
実用化、そして普及における課題をまとめておきましょう。
それこそが規制の理由だからです。

1.本当に安全な技術なのか

新しい技術にはトラブルがつきものです。
iPS細胞は実用化レベルまで来ていますが、それでも完全にがん化リスクを回避できたのか?
明言はできません。
ならばゲノム編集も、何が起きるかわかりません。

厚生労働省がおよび腰なのは、安全性に関する問題がクリアされていないからです。

早く使わせろ!
そう急かされる一方で、薬害などが起きれば責任を追及されます。
ある意味ではかわいそうですね。
もちろん十分な説明をしてこなかった?
一部に隠蔽(いんぺい)体質があるのも事実です。

成功や失敗を含めて情報開示することが大切なのでしょう。
そうすることによって信頼度が高まり、どの場合にどうすべきなのか?
具体的な指針ができてくるからです。

2.命の選別にならないか

遺伝子操作をする際、常に付きまとう議論は、命の選別にならないのか?です。
つまり先天性疾患を治しましょう!
それは言い換えると、先天性疾患は悪者!
障害者を否定する思想に発展しやすいからです。

もちろん誰もが障害がなく健康で暮らしたいですね。
将来がんにかかるリスクも減らしたいでしょう。
そうした遺伝的要因を排除する。
これも正論です。
一方で障害者も生きる権利がある?
これはきれいごとなのでしょうか。

ゲノム編集を含めた遺伝子治療が進めば、将来的に先天性疾患などはなくなるのかもしれません。
とはいえそれを本当に目指すべきなのか?
こちらも本音による国民的、国際的議論が不可欠です。

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3.遺伝子組み換え農産物と矛盾しないか

多くの人は忘れているかもしれませんが、遺伝子に関してはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)でも問題になっていました。

つまり遺伝子組み換え作物の問題です。
日本では、大豆などで遺伝子組み換え作物を使っていれば、製品にその旨を記載しなければなりません。
とはいえアメリカではその義務がありません。
TPPが締結されると、アメリカの論理が日本を支配する予定でした。

日本人は遺伝子組み換えに対する拒否感が強いようです。
食べる物だから当たり前!
そうした意見もうなずけます。
明確な安全性が確保されていないからです。
ではもっと命に直結する医療に関しては、遺伝子組み換えを許すのでしょうか。

遺伝子組み換え作物を忌避する人は、自分や家族が病気になった場合にも、遺伝子治療を拒否するのでしょうか。
話は別?ではありません。
そうした矛盾を、国民の一人ひとりが解決できるのか?

容認すべきとの意見もある

遺伝子操作に関して日本ではネガティブな印象があります。
とはいえゲノム編集を容認すべきとの意見もあります。
それらをまとめてみましょう。

1.日本は特許戦略で負ける

1953年にワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を発見しました。

それからちょうど半世紀後の2003年、人間の全ゲノム、すなわちDNA配列が明らかになりました。

そこには驚異的な科学技術の進歩と、科学者の執念・競争心などがあります。

配列が決まれば、そこからさまざまな情報が得られます。
例えばがんや先天性疾患に関連する遺伝子などが見つかりました。
そして特許取得合戦が始まりました。
遺伝子は誰の物か?
そういう議論がある一方で、製薬企業にとってはビッグなビジネスチャンスです。
ベンチャー企業も一かく千金を狙えます。

とはいえ日本は、ゲノム解読の時から出遅れていました。
もちろん資金的な問題もあります。
さらに特許に関しても日本は追いつけません。
既に中国では一部実用化の動きもあります。
みすみすチャンスを逃すのか?
苦渋の選択でもあります。

2.救える命がある

医療はビジネスなのか?
一方で最新技術を使えば救える命があるのも事実です。
もちろん100%成功するわけではなく、五分五分?
それ以上に失敗するリスクは高いのです。
それでも助かる可能性があるならば、試してみたい人が多くいます。

日本では、厚生労働省が別途承認しないと、海外で有効性が示され認可されている薬であっても使えません。

そこには人種による、それこそ遺伝的な適不適があるからです。
それを慎重に判断したいのでしょう。
数々の薬害が起きています。
その教訓もあります。

とはいえ遺伝情報が明らかになることで、副作用を極力避けられるようになりました。

ならば躊躇(ちゅうちょ)するべきではないのでしょう。

民間では進むのか

今後策定されるであろう指針には罰則規定がないようです。
ならば一部の不妊治療のように、善意ある民間施設がゲノム編集を使った医療を開始する可能性があります。
もちろん健康保険は適用されないので自己負担は大きくなります。
それでも受けたい患者さんはいるでしょう。

最終的には利害関係が絡みます。
金持ちだけが利用できる話かもしれません。
美容の世界でも同じことです。
そうやって技術が進歩して一般医療の分野でも使われるようになるのでしょう。
やり続けて実績を増やせば、認められる時が来るはずです。

科学者が決めてよいのか

豊洲市場の問題もそうですが、科学的な安全性だけで判断してよいのでしょうか。

ノーベル賞を受賞したような技術があれば、それを応用するべきなのでしょうか。
そうした国民的議論は必要ないのでしょうか。

とはいえ科学技術を国民にわかりやすく説明するのは難しいことです。
中途半端な理解だと、すぐぐに人権派、自然派、似非ジャーナリストなどが登場し、逆にわかりにくくしてしまう可能性もあります。
そういう意味では、国民の一人ひとりが自分のこととして真剣に考えるべきなのでしょう。

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たくと
たくと
著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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