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高齢者に抗がん剤を使わない!厚労省が「がん治療の新しい指針」を作る予定です

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この記事の所要時間: 640

2017年4月27日の日本経済新聞一面右下に「高齢者がん治療に指針」との見出しがありました。読んでみると、高齢者には抗がん剤を使わないようにするガイドラインが検討されているようです。

もちろんすべての人に効果がある抗がん剤などありません。現段階でも選択的に利用されているはずです。とはいえ厚生労働省が大きく舵を切る背景には何があるのでしょうか。具体的な理由を探ってみましょう。

がん対策推進基本計画

「日本人の2人に1人はがんに罹る時代です」衝撃的かつ脅しともとれるような宣伝文句があります。とはいえ長生きすればがんになるのは当たり前です。誤解を恐れずにあえて言うとすれば、運動すれば疲れます!同じようなことです。誤魔化されてはいけません。

そうしたがん患者の増加を鑑みて厚労省は2017年の夏を目途に「第3期がん対策推進基本計画」を策定する予定です。これは今後6年間におけるがん対策を明示します。その中で、高齢者のがん治療対策も盛り込まれる予定です。

ちなみに第1期がん対策推進基本計画は2012年から2016年までの5年間を対象期間として2007年に策定されました。重点項目として専門家の育成、緩和ケアの推進、がん登録の推進、そして働く世代や小児のがん対策を謳っていました。

5年後の2012年、当初の計画を再検討する意味で始められたのが第2期計画です。重点目標に関しては大きな変更はありません。なお2007年時点では「第1期」とは銘打っていません。故にあえて第〇期と謳う必要もなさそうです。

抗がん剤の使用を控える理由

新しい計画において、高齢者に対する抗がん剤の利用を控える?なぜそのような判断に至ったのでしょうか。具体的な理由について探ってみましょう。

1.そもそも効果が明確ではない

国立がん研究センターの調査によると、進行がんを患う70歳以上の約1500名を調べてみたら、抗がん剤の投与によって生存率がアップしたかどうか、明確ではなかったようです。

一般論として、高齢になると免疫力や代謝力が低下します。そのため薬が十分に機能しないこともあるでしょう。一方で高齢だとがんの進行も遅くなると言われます。がん細胞であっても人体の代謝力が影響するからです。

もちろん研究者や為政者にとって都合の良いデータなど簡単に取れるはずがないのです。がんは不治の病ではなくなりましたが、未だにわからないことも多いのが現実です。謙虚な姿勢を持つことは大切です。

この結果を鑑みて、現場では専門家が慎重に判断しているでしょうが、抗がん剤に頼った治療を続けてもよいのか?疑問が生まれていたとしたら、健全なことでしょう。

2.生活の質を優先する

抗がん剤に効果があるとしても、また昨今はピンポイントでがん細胞を狙えるようになったとしても、やはり副作用がある点は否めません。さらに入院したり通院する費用や時間、精神的負担も計り知れません。

高齢者になれば移動も難しくなります。身体が思うように動かない、特に地方在住者であれば、近くに医療施設もありません。生活に支障が出ます。もちろん治療のためではありますが、どちらを優先すべきなのか?患者の判断に委ねるべきでしょう。

中には延命治療を望まない人もいます。病院でチューブに巻かれて死ぬより、最期は住み慣れた自宅に戻りたい!最後の望みをかなえてあげることも、大切な治療のひとつです。気持ちが落ち着くことで、生存期間が伸びることも稀ではありません。

3.医療費を削減する

効果があったとしても、抗がん剤には莫大な費用がかかります。年間数千万円出すことを是とするのか?それでどれだけの延命ができるのか?命をコスパで決めてはいけませんが、トータルの国民医療費を考えれば無視できないことです。

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もちろん健康保険や高額療養費制度、さらに民間の医療保険を活用すれば、患者さん個々の経済的負担は軽減されます。とはいえそれが保険財政、税金に回ってきます。地域や国がどこまで個人を支えるべきなのか?本音の議論が求められます。

一方で延命させれば医者や製薬会社が儲かる、金持ちだけが長生きできる仕組みを改める必要もあるでしょう。国民皆保険制度を健全に運営すべきです。

問題点はないのか

抗がん剤を使わないという選択が専門家から出されるとしても、問題点はないのでしょうか。つまり治療を受けるのはあくまでも患者さん本人だからです。

1.本人の承諾を得られるのか

第一の問題点は、患者さん本人の承諾を得られるのでしょうか。どんな形であっても長生きしたい!切実な願いがあります。一縷の望みに縋って医者を渡り歩く人もいます。日本では生きる権利が保障されています。誰に咎められることもありません。

また医師は患者の治療を拒むことができません。専門的な見地からの冷静な判断でしょうが、延命措置を求められれば、それに従う義務と責任が発生します。さらに日本では安楽死が認められてはいないので、治療の積極的な放棄は許されません。

一方で認知症や他の病気などによって本人の意思を確認できないケースも少なからずあります。その場合にはどうするのか?もちろん事前に了承を得ておくことも大切です。これからは臓器移植の問題と同様に、健康な間に何らかの書面を残すことを義務付けるべきなのでしょう。

2.家族の了解を得られるのか

本人の承諾を得られない状況にあれば、家族の了解を得る必要があります。それまで同居していた親族なら、患者さんの気持ちを理解しているでしょう。それを医師に伝えれば、問題はありません。

とはいえ家族が積極的な治療を求めることもあります。五分五分であっても可能性があれば賭けてみたいかもしれません。不謹慎な言い方ですが、遺産関係が絡んでいると話は面倒です。もちろんそれを拒むことは、日本の法律ではできません。

3.そもそも延命とは何か

日本には先送りの文化があります。これは人間の死に関しても当てはまります。一神教を信じる人達であれば、もちろん悲しいことですが、死を深刻に考えません。つまり神様に召されることだからです。

そういう意味で日本では、死を忌み嫌います。自分の引き際がわからなくなります。そのため昏睡状態に陥っても、何らかの延命措置を続けます。スイッチを切ることを躊躇しがちです。もちろん当事者の責任逃れ?そんな一面も否めません。

そもそも延命とは何か?胃瘻一つをとっても正しい選択なのか?難しい判断です。怪我を治すなど命に直接かかわらない病気への治療は正当化できるでしょうが、現代医学では完治する見込みがない症状の治療を続けるべきなのか?

緩和ケアが求められる

医学が進歩しても治らない病気はあります。そもそも高齢になれば、治るものも治りにくくなります。そうした場合の治療をどうするか。副作用や手術に耐えられないならば、少しでも症状が緩和されるケアが求められます。

もう忘れられた話題ですが、医療用大麻はどうなのか?苦しむ家族を目の前にして、何ができるのか?最大限の努力をしてあげるにはどうするか。

安楽死や自殺を含めた死ぬ権利が正当化されない現状であれば、少しでも精神的負担を軽減させる措置を充実させるべきでしょう。そういう意味で新たな指針は、新しい希望が盛り込まれるのかもしれません。ピンピンコロリと逝ける人は、そんなに多くはないからです。

高齢者医療を考える

高齢社会は今ある現実です。これからどんどん高齢者の医療問題は出てくるでしょう。そうした場合に、国や自治体として、医師として、または家族、さらに第三者としてどうかかわるべきなのか?先送りすることなく、議論すべきでしょう。

少なくとも個々人のレベルで、自分はどうしたいのか?運転免許証や健康保険証の裏にある臓器提供意思表示欄のように、事前に明文化しておくべきなのでしょう。それが納税、勤労、教育に次ぐ新しい国民の義務になるかもしれません。

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たくと
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著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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