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塾講師が問う!中学受験の理科はどこまで科学的に正しいのか<生物編>

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この記事の所要時間: 82

日本人のノーベル賞受賞が続いています。
その一方で若者の理科離れが進んでいます。
ノーベル賞を受賞した先生方が口をそろえて言うことには、

近い将来日本の科学は危機を迎える!

つまり現在の日本には、

  • 若手研究者の就けるポストがない
  • 加えて予算がつかない
  • 短期的な結果を求められる!

このような問題から、研究する環境が整っていないと指摘しているのです。

科学すなわち理科の勉強は、じっくりと考えるべきものです。
しかし中学受験という短期的な目標にとらわれて理科嫌いになる子も多いです。

そもそも中学受験に向けて学ぶ理科の内容は、どこまで科学的に正しいのでしょうか?

塾講師として教えていて気になる点を挙げてみましょう。
※なお今回は生物分野に限定します。

中学入試が理科嫌いを助長しているのか

先日書いた記事において、中学受験が子供の理科嫌いを助長しているのではないか?そんな説を提唱いたしました。
子供たちが理科につまずく点は、

教える側も矛盾を感じていたり自分が勘違い思い込みをしている部分

であったりします。
すると説明が曖昧になる?余計に子供達も混乱します。
参考「中学入試が子供の理科嫌いを助長している?5つの問題点とは

最近は専門書なども多く利用できるようになりましたが、専門書の中でも曖昧であったり、本質が理解できていない現象が多くあります。
そうしたことを子供たちにどこまで教えるべきなのか?
逆に、現代の科学では解明されていません!
そう断言することで、子供の興味に火がつくことも珍しくはありません。

具体的な事例をいくつか紹介します

生物には例外が多いです。
また新しい事実が発見されることによって常識が変わりやすい分野です。
そのためちょっと不思議な問題や模範解答、参考書の解説が少なくありません。
具体的な例を紹介します。皆さんも考えてみてください。

1.医学関係は専門書でも曖昧

将来医者になりたい小学生も多いです。ならば医学的な部分は正確に教えるべきでしょう。
とはいえ専門書を読んでも曖昧な解説が多いです。それをどこまで説明すべきなのか。

(1)関節はじん帯で包まれている

神奈川県にあるK女子中学の入試問題に、直接問う部分ではありませんでしたが

関節は(中略)じん帯という膜に包まれています

との記述がありました。
気になっていくつかの中学受験参考書を見ても、じん帯で覆われている?的な説明がされています。

なお解剖学の専門書で調べると、

関節は関節包という結合組織の膜によって包まれ、じん帯はその周りを補強する
もしくは関節の中で骨同士をつなぎ合わせている

そういった解説があります。
そもそも専門書の中にある図も統一されていません。

もちろん肘や肩などの関節ごとに形態は異なるでしょう。
すべてをまとめて考えてはいけないのかもしれません。

とはいえ医学の中でも曖昧な部分を小学生が読む参考書にもっともらしく載せてよいのでしょうか。
(2)網膜に情報はどう届くか

眼から入った情報が網膜にどう届くか?
ここも具体的な入試問題では問われませんが、参考書では矛盾したような解説があります。
驚くことに医学書を読んでも明確な答えは得られません。

つまり凸レンズの仕組みとして説明をする際には、水晶体がレンズの働きをして網膜が焦点になっています。
一方でカメラ目の説明になると、水晶体が焦点になっており網膜では面で接する解説がなされています。

ちなみにB社の参考書は、上記2つの解説が同じページに示されています。
またG社の参考書は、焦点が水晶体や網膜ではなく、ガラス体の中にあります。
もちろん光は分けられません。どちらも正解なのでしょう。
とはいえそれを見た子供たちは、混乱しないのか?
たぶん何も考えずに素通りしているのでしょう。
それを良しと考えるべきなのか?
変に説明するとヤブヘビでしょうか。
(3)デンプンが三大栄養素のひとつ

私の学生時代、三大栄養素と言えば、炭水化物、タンパク質、脂肪の3つでした。
しかし今は炭水化物ではなく「でんぷん」になっています。
これは、

でんぷんがブドウ糖にまで分解されて小腸で吸収される!

そう教えるのに都合が良いからでしょう。

こちらも栄養学の書籍では曖昧な記述が多いです。

ちなみに厚生労働省では「炭水化物」と表記していますが、そこに食物繊維は含まれていないようです。
また農林水産省は「炭水化物(糖質)」と表記しています。
さらに高校の生物(文部科学省!)では「炭水化物」です。

そもそも炭水化物とは、炭素と水素からできている物質の総称です。

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細かく言うときりがありませんが役所の意見を統一しておかないと、大人になって意見が食い違う?そんな話になりそうです。ここにも縦割り行政の弊害があるのでしょうか。

2.アサガオの花びらは何枚か

だれもが一度は栽培したことのある植物、それはアサガオでしょう。
朝顔市などがあり、庶民的にも人気がある花です。
もちろん改良種がたくさん作られています。そのためこちらも細かく言い出すときりがありません。

とはいえ一般的なアサガオの花びらは何枚か?
双子葉植物なので5枚が基本です。
ただし根元から花びらがくっついている合弁花なので話がややこしくなります。

つまりO社の参考書では、アサガオの花弁は1枚!
G社の参考書は「ろうとのような形をしている」具体的な枚数は書いていません。
またB社の参考書も「花びらは全部がくっついて、じょうご(ろうと)のような形になっている」枚数の記載はなし。
さらにJ社の参考書は枚数の話自体がありません。

実際には何枚なのでしょうか。
ちなみにウィキペディアでは「花弁5」と記載されています。

3.肥料とは何か

入試問題にも散見されるのは肥料という言葉です。

植物の根の働きとして、B社の参考書では「水や水にとけている肥料分を吸収する」と記載されています。
また某塾のテキストにも「肥料を吸収する」と書かれています。
一方でG社とJ社そしてO社の参考書では「養分を吸収する」とあります。
農学を学んだ者として、肥料を吸収する?ちょっと違和感があります。
つまり肥料とは人工的に与える養分のことを指すのが一般的です。栽培植物や実験であれば肥料と言うべきかもしれません。
しかし野に生えている植物は肥料を与えられていません。
植物の一般論として説明するのであれば、養分という用語を使うべきでしょう。
もちろん言い訳もあります。
養分というと、光合成で作ったでんぷんと混同するからです。
そのため植物学的には、根から吸収するいわゆるミネラル、無機物質は養分、植物が作り出した有機物質は栄養分と使い分ける傾向があります。

4.プランクトンは植物か

先日、鎌倉付近で夜間に青く光るプランクトンが出現して話題になりました。もちろん漁業的には心配ですが、科学の不思議を教えるには良いテーマでもあります。
参考「GWに青く光る赤潮が発生!プランクトンとは何か

中学入試にも出題されやすいテーマなので、丁寧に説明すると、
プランクトンには、

  • 植物プランクトン動物プランクトンに分かれる!
  • ミドリムシのように両方の特徴を持つ種類もいる!

としています。

とはいえプランクトンは植物なのでしょうか。

植物の定義は、葉緑体を持って光合成をし、自ら栄養を作り出す!
これに従えばケイソウやアオミドロなどは植物と呼んでも良いのでしょう。
しかし生物の分類で考えれば、動物界や植物界ではなく原生生物界です。
樹形図の根元の部分で分かれてしまいます。

同じ議論で言うと、鞭毛を持って動くコレラ菌は「動物プランクトン」なのでしょうか?
高校の生物でも分類の話は教科書の後ろの方なので、あまり詳しく説明されません。
なんとなくのイメージで大人になってしまうようです。

5.孵化と羽化は教えるけど蛹化(ようか)は教えない

昆虫の完全変態は授業でも盛り上がるテーマです。

つまり卵から「ふ化」して幼虫になる→幼虫からさなぎになる→そしてさなぎから「羽化」して成虫になる。

スムーズに説明できます。しかしここまでで違和感を覚えませんか。

すなわち「ふ化」と「羽化」は教えますが、幼虫からさなぎになる過程を教えません。
たまに子供から質問されます。そこに名前はないのか?
もちろんあります。
それは「ようか」です。漢字で書くと蛹化です。
蛹はさなぎという意味です。

なぜ蛹化は教えないのか?
それが記載されている参考書を見たことがありません。
蛹の漢字が難しいのでしょうか。
ならばふ化だって孵化です。漢字が原因ではなさそうです。
たぶん入試問題に出ないからでしょうが、「ようか」だけが出題されない理由がわかりません。

受験理科の正答は、出題者にあります

科学的に違っていても、解答は出題者が決めた模範解答に従って採点されます。

塾で教えていて葛藤です。
中途半端な説明に終わってしまうこともしばしばです。
これなら理科が嫌いになる?
子供の立場にあれば、否定できません。今後も状況は変わらないのでしょうか。

出題者や参考書の作成者に専門家はいないのか?
参考書の選び方で知識が変わる!

不思議です。
中学受験をする子供たちは将来的なエリートです。このままで日本の科学は大丈夫なのでしょうか。
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たくと
たくと
著者サイトたくとすく~る
生まれつき無関心な子供はいない! そう信じ、学習塾や講習会などで、 科学を楽しく解説しようと日々奮闘しています。 半世紀生きていますが、 気持ちは、今でも夢見る少年です。

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