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加計学園問題から派生して、批判の応酬になっています。つまり安倍首相が、他にも獣医学部の新設を認める発言をしたことに対し、日本獣医師会などが2017年6月30日に獣医学部の乱立を憂慮する記者会見を開きました。菅官房長官は感染症の多発を例として首相の新設発言を擁護しました。

私個人として、現政権を支持していません。とはいえ現段階における報道内容は、論点が的外れです。視聴率稼ぎ?知っててやっているなら良いですが、現実が見えていないようです。すなわち獣医師会の批判を正論として報道して良いのでしょうか?

かつて農業教育の現場にいた経験から、獣医師に対するニーズがある、新設すべきである!その論拠をまとめてみましょう。
参考「政治力で四国の特区に獣医学部を!本当の問題は何か?簡単に解説します

獣医学部の現状

まずは獣医学部の現状についてまとめておきましょう。

1.大学数、募集定員、受験倍率

日本に獣医系の大学は国公立と私立を併せて16大学あります。

募集定員と直近の平均受験倍率も併せて列記します。ただし国立は前期と後期、私立も推薦やセンター利用など受験形態が多様になっています。また農学部など大まかな受験倍率しか公表されていないケースもあります。あくまで参考としてください。

(1)国立大学

大学名 定員 倍率
北海道大学獣医学部共同獣医学科(帯広畜産大学) 15名 約8倍
帯広畜産大学畜産学部共同獣医学科(北海道大学) 40名 約4倍
岩手大学農学部共同獣医学科(東京農工大学) 30名 約3倍
東京農工大学農学部共同獣医学科(岩手大学) 35名 約5倍
東京大学農学部獣医学課程 30名 約3倍
岐阜大学応用生物学部共同獣医学科(鳥取大学) 30名 約3倍
鳥取大学農学部共同獣医学科(岐阜大学) 35名 約3倍
山口大学共同獣医学部獣医学科(鹿児島大学) 30名 約4倍
宮崎大学農学部獣医学科 30名 約4倍
鹿児島大学共同獣医学部獣医学科(山口大学) 30名 約5倍

なお共同獣医学部・学科とは、1校では十分な教育ができない場合、複数の大学と共同して研究などを行う仕組みです。2009年から大学間提携の手法として採用されました。上記のかっこ内は、共同教育を行っている大学です。

(2)公立大学

大学名 定員 倍率
大阪府立大学生命環境科学部獣医学科 40名 約4倍

「広域的」がキーワードになりましたが、大阪府立大学は獣医学部ではありません。この点の報道も、正確にすべきでしょう。どちらが印象操作しているのでしょうか。

ちなみに学部は、一つの独立した教育単位です。原則として学部内にすべての教員や教育施設を完備する必要があります。大まかな言い方ですが、小さな単科大学と同じレベルです。一方で学科は、学部内の一部門にすぎません。本気で専門教育をするなら学部が必要です。

(3)私立大学

大学名 定員 倍率
酪農学園大学獣医学部獣医学科(北海道) 120名 約5倍
北里大学獣医学部獣医学科(青森県) 120名 約7倍
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科(東京都) 80名 約10倍
日本大学生物資源科学部獣医学科(神奈川県) 120名 約10倍
麻布大学獣医学部獣医学科(神奈川県) 120名 約9倍

最近は畜産や農業という「ネガティブ」な名称を使わない私立大学が増えています。そういう姿勢こそ、農業離れを助長しているようで本末転倒です。ただし獣医は国家資格だから変えられないのでしょう。本当は動物医などに改称したいのかもしれませんが。

2.偏在が著しい

(1)四国に獣医学部がない

上述の大学を見る限り、関東への地域偏在が目立ちます。近畿を広域的にみても大阪府立大学だけです。また中国には2校ありますが四国にはありません。家から通いたいという学生や保護者のニーズはないのでしょうか。

(2)お金持ちしか獣医になれない

国公立大学は募集定員自体が少なくなっています。言い換えると現在の獣医は、ほとんどが私立大学出身者です。お金がないと獣医になれない現状がうかがえます。医学部並みの実験があるため学費は高騰しています。年間150万円以上します。家から通えないので下宿代などトータルすると、貧乏人は諦めるしかありません。

なお国公立大学の倍率が低く感じられますが、これらはセンター試験によって受験生に対する事実上の足切があるからです。つまり一次試験の結果によって受験自体を諦める人がいるためです。

3.獣医は足りていない

共同教育課程を作っているということは、研究者が足りないということを意味しています。国公立では東大と大阪府立大学、そして宮崎大学の3校しか独立できていません。ただしいずれも「獣医学部」ではありません。ならば積極的に獣医学部を作って若手を育成すべきでしょう。獣医学会の言い分には矛盾することが多いです。

またいずれの獣医系も高い受験倍率になっています。地方の私立大学では定員割れが起きている現状を鑑みると、獣医系は花形であり、どの大学でも作りたいと考えています。だから愛媛県に新しい獣医学部を新設するのは喜ばしいはずです。利害関係者以外にとっては。

獣医へのニーズはある

獣医学部が新設されると、国家資格でもある獣医師の供給が過剰になる!そう指摘する論調が多いです。とはいえ有資格者が増えると獣医は就職できずにあぶれてしまうのでしょうか?そんなことはありません。獣医に対するニーズは枚挙にいとまがありません。

1.ペットは依然として多い

昨今はイヌのペット数が急減しています。それでもネコ人気はあります。もちろんペットの飼育数に関しては波があるでしょう。将来的にブームが続くとは思えません。とはいえ15歳未満の子供数よりペットの方が多いのは事実です。

一方で動物病院へ行くと、1回当たり1万円前後かかります。毎年予防接種など「維持費」がバカになりません。これは健康保険がないためですが、そもそも治療費は「言い値」です。人間の薬価のような定価がありません。なかばブラックジャック状態です。

こうした現状を打開するためには、獣医師を増やして競争原理を働かせるべきでしょう。日本は資本主義社会です。やりたい人がやりたいことをできるようにすべきです。

2.エキゾチックアニマル系が人気

イヌが減る理由は、毎日散歩に連れていくなど面倒だからです。吠え声も近所迷惑です。ネコは1日家の中に「放置」しても問題ありません。一方で増えているのは、ケージや水槽などで飼えるエキゾチックアニマル系です。具体的には爬虫類、両生類、小さなサル類、熱帯魚などです。

飼育者や飼育頭数は増えていますが、これらの動物を治療できる獣医師が不足しています。犬猫病院はありますが、ヘビ専門?そんな病院はありません。希少動物であれば、ほとんどの場合遠回しに断られます。

今後はさらに単身世帯が増えます。世話が比較的簡単なエキゾチックアニマル系も増加するでしょう。それを診ることができる獣医は絶対に必要となります。

3.捨てペット問題にも対応すべし

エキゾチックアニマルに続く問題として捨てペットがあります。ひとつは高齢の飼育者が死亡してしまうケースです。イヌやネコも適切な管理をすれば長生きします。高齢になって寂しいから飼育を始めると、自分の方が先に逝ってしまいます。これが現実です。

一方でカメや熱帯魚など、大きくなって飼いきれなくなった!近くの川や池に捨てられる事例も増えています。東京と神奈川の境を流れる多摩川は、熱帯魚系が多数捨てられているので、アマゾン川をもじって、タマゾン川とも呼ばれる状態になっています。

さらに猫屋敷の問題もあります。飼育者が手に負えないパターンも珍しくありません。震災などで止むなく手放す人もいます。こうしたペット系トラブルに対応できる獣医が、民間そして行政を含めて必要です。

4.外来生物対策が重要になる

ペットの話は外来生物にも関係しています。つまりペットが逃げ出して野生化する問題が多発しているからです。最近は東京でもハクビシンが民家に住み着く事例があります。これに対応できる獣医も必要です。

昆虫は対象外かもしれませんが、神戸と名古屋で発見されたヒアリなどの外来生物対策も急務です。一方で伝染病を媒介するカ対策も重要です。獣医と医師などの専門家がチームを組まない限り根本的な対策はできません。

5.野生動物との共存問題

外来生物の反対ですが、在来生物、すなわち野生動物との共存問題も深刻です。昨今は山からクマ、シカ、サル、イノシシなどが里に下りてきます。かつてのような明確な境界線がなくなりました。とはいえ一方的に射殺するのはどうでしょうか。

また絶滅危惧種の保護もあります。もちろん国内に限定する必要はありません。日本の若者が獣医の資格を有して海外での自然保護活動に参加する!そうしたニーズも少なからずあります。実際に獣医師がJICAの事業である青年海外協力隊などに参加する事例があります。

6.医学や薬学とのコラボも必要

伝染病対策など医学とのコラボも必要です。さらに医薬品開発であれば薬学との共同研究も求められるでしょう。人獣共通の病気もあります。ネコアレルギーも愛猫家にとっては深刻です。そうした広い視野の持てる獣医が今後は不可欠になるでしょう。

7.馬の歯医者などの隙間産業

獣医に関しては隙間産業もあります。先日テレビ番組で紹介されていましたが、日本には馬の歯を治療できる獣医が少ないとか。基本的に獣医師免許があれば誰でもできるようですが、重労働だから?需要があるのに成り手がいないようです。

獣医の分野は、探していけば仕事はいくらでもあるはずです。単に探そうとしない、今の特権階級に安住したいだけなのでしょう。現場を見ようとしない教授や学会の重鎮たちがいる限り、新たなニーズが見えないのは当たり前です。

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獣医界の言い訳は正当なのか

今回日本獣医学会などが反論しました。その要旨は、獣医学部が乱立すると教育の質が下がる!百歩譲って、今の教育は質が高いのでしょうか?上述のように人材が不足しています。ならば積極的に学部開設をすべきでしょう。単なる自惚れ?既得権益保護にしか聞こえません。

例えば巷を見回すと歯科医が多いですね。コンビニよりも数は多いそうです。とはいえどこも予約がいっぱいです。飛び込みで治療を受けてもらえません。質の低下はあるでしょうがインプラントや歯の定期検診、ホワイトニングなど需要を自ら開拓する努力をしています。

一方で看護師や保育士は、有資格者が十分に働けていません。もちろん女性が多いので結婚・出産によって家庭に埋もれてしまうケースです。とはいえ実際に資格を活かせる人が不足しているのは事実です。適切な職場があれば、有資格者が余ることはないのです。

獣医教育や獣医師自身の質を上げたいならば、競争すべきです。競争しないとレベルは上がりません。自浄作用がなく現状に安住する自称「教育者」がいる限り、獣医界は質の低下を招くでしょう。だからこそちょっと強引であっても岩盤を突き破る改革が必要なのです。

教育の機会均等を目指せ

教育の機会均等を目指すべきです。医学部のように1県1学部などは贅沢でしょうが、隣の都道府県にある!その程度は確保すべきでしょう。四国という大きな島に1校もないのは不自然です。逆に何らかの忖度が働いているとしか思えません。

獣医系大学で働く先生方に言いたいことは、通いたい学生のこと、獣医師のサービスを必要としている一般市民、そして治療を待っている動物たちのことを第一に考えてください。

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