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『そうめん』を研究しよう(第1回) そうめんってどんな麺?『そうめん』を研究しよう(第2回) 索餅→索麺→索麺へ!に続くそうめん研究第3弾は、「冷や麦」と「素麺」の違いです。

冷や麦と素麺の違いなんて簡単簡単!!

そう思っておられる方は多いのではないでしょうか?
何故って、まず呼び名が違う!そして、太さが違うからです。
けれど、大半の方は、それだけが違うのであって、基本的には同じものであるという感覚をお持ちなのではないかと想像されます。しかし、そんな単純な話ではなく、元々素麺と冷や麦は、うどんとそばのように、全く異なる食品なのです。

太さが違うだけ!は間違いではないらしい

とは言え、太さが違い、呼称が違うだけというのは、「全国乾麺協同組合連合会」が堂々と認める見解です。主原料に小麦粉と塩を使った乾麺なら、全てそれで区分するのが望ましいと、JASこと日本農林規格でも指示していると言うではありませんか!!

JAS規格による乾麺の分類

という事で、JAS規格による分類では、

 直径1.3ミリ未満の乾麺が素麺!
 直径1.3ミリ以上1.7ミリ未満の乾麺が冷や麦!
 直径1.7ミリ以上4.5ミリ未満の乾麺がうどん!
 直径4.5ミリ以上の乾麺が棊子麺!

となっています。なんと、丸くても平べったくても太けりゃ棊子麺というのですからビックリ! 正しく太さによって名前が変わるだけですね。

ただし、JAS規格には一つ大きな但し書きがあります!

上記の規格には条件があります。それは、あくまでも工場で大量生産される「機械麺」についてはこの規格である、ということ。三輪素麺や揖保乃糸のような手延べ素麺になると、この限りではないのです。
何故なら、室町時代には原型を極めていたそうめんには500年以上の歴史があります。当然、その頃からJASがあった訳ではありません。即ち、JAS規格が作られる以前に確立されていた、全国各地の手延べ素麺の歴史と伝統をおいそれと崩すわけにはいかない、という事です。
実際、太めの素麺として人気を博している徳島の「半田素麺」は直径が1.7ミリ程度です。先の規格に当てはめると、完全なる冷や麦になり、「半田冷や麦」と改名しなくてはならなくなってしまうではありませんか!!そこで、そうした事態を回避すべく、JAS規格では手延べ麺については、直径1.7ミリ未満を「素麺」もしくは「冷や麦」としていて、どちらの呼称を使ってもOKという事にしているのです。従って、素麺と冷や麦は太さで見分けられるなんていうのは、とんでもない話なんですねぇ!!

これが、手延べだ!

加えて、手延べ素麺の場合は、単に小麦粉と塩水を混ぜた生地を捏ねて伸ばしたのでは、日光浴させる際に乾燥してしまうため、植物油を塗布するんでしたよね。覚えていますか?
この理屈は、同様の材料と製法で作る全ての麺に当てはまる事です。そこで、JASの「乾麺類品質表示基準」における手延べ麺の規定があります。それは、小麦粉に食塩と水を混ぜて練り、綿実油などの食用油、もしくは小麦粉やでん粉を塗ってから、よりを掛けながら引き延ばし、最終的にしっかりと乾燥させ、熟成させたものである事。製法に関する規約も設けられているのです。こうして、「手延べ干しめんの日本農林規格」を満たしたものだけが『手延べ』と名乗ったり、表記したり出来るのです。

素麺と日や麺は先端で見分けるらしい

しかし、こうした事実を知ると、直径が1.7ミリ以内で、規定の製法で作られたものなら「素麺」でも「冷や麦」でもいいという事になり、もはや素人に手延べ素麺と手延べ冷や麦を見分ける事は出来ないのではないかという気がします。

麺の製法を知れば、区別できる

きちんとその製法さえ知っていれば、思いのほか容易にどの種類の麺かを区別する事が出来ます。
何故なら、手延べ麺の条件は上記の通りでOK。そう、伸ばし方や切り方に関する規定は設定されていないのです。
そこで、素麺はただひたすら麺を細く延ばし、1本1本仕上げたものを適当な長さにカットします。一方、冷や麦の場合は、最初に薄く打ち延ばした生地を切って行くという正しくうどんやそばと同じ行程で作られます。するとどうでしょう!?素麺は切り口となる麺の両端が丸いのに対し、冷や麦の方は四角くなるではありませんか!!
即ち、先端が丸いのが素麺で、四角いのが冷や麦という訳です。
ちなみに、機械麺は全て薄く伸ばした生地を切るため、断面が四角くなります。よって、太さで見分けるしかないのです。

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冷や麦は素麺ではなくうどんらしい

なんと、太さではなく、先端を見れば素麺と冷や麦の区別が出来るというのは、ちょっとビックリです。実は、この行程から、素麺と冷や麦が全く異なる食品であるという事実も明らかになると言えるでしょう。

冷や麦はうどんだった!

先述の通り、薄く伸ばした生地を細く麺切り包丁で切るのは、そばやうどんの典型的作り方で、なんと、冷や麦は素麺の仲間ではなく、うどんの仲間となるのです。もっと分かりやすく言えば、冷や麦は素麺の太いバージョンではなく、うどんの細いバージョンであるという事ですね。
事実、辞書で冷や麦の意味を調べてみると、うどんより細く、素麺より太い麺であるというように、単純に太さにこだわっただけの大ざっぱな解説をしているところもありますが、広辞苑では、細打ちにしたうどんをゆでて冷水でひやし、汁をつけて食べるものであると、うどんの一種である事が明記されています。

切らないのが素麺!

それに対して素麺は、索餅や索麺の時代から、切り売りしないのが基本だったものと思われます。それは、第1回の記事でも出て来た千切って食べていた事からも分かります。
その形態は、現代の素麺に極めて近い形状のものが定着した室町時代以降も変わる事なく、宮中や貴族社会では、茹でる際に手で適当な長さに折っていたと言います。しかし、一般庶民の間では、長いまま茹で、糸巻きのように巻いたり、針金のように輪にして出されていたものと見られます。
それが、今のように切り売りされるようになったのは江戸時代初期からです。6寸に切って印紙で上下と真ん中の3ヶ所を巻いて箱詰めした「切り素麺」なるものが登場して来ました。6寸と言えば、約20センチほどですから、正しく今の贈答用素麺といった風貌だったのでしょう。
実際、この切り素麺は富裕層向けで、町民たちが食べていたのは、相も変わらずの長いままの素麺!彼らには未だ折って茹でるという習慣もなかったため、荒っぽい人になると、耳に引っかけたり、首に巻いたりという独自の食べやすい食べ方を編み出しては堂々と実践していたらしいです。中には軒先に置いた鉢の中の素麺を2階の窓から首と箸を出してすする者までいたとかいないとか・・・。まあもっとも、これらは落語のネタであって、真実みにはかなり欠けますが、それだけ素麺が庶民に親しまれていたという事なのでしょう。
という事で、今でも身近な夏の風物である素麺、ちょっと興味を持って調べただけでも、そこには意外な歴史やウンチクが多く潜んでいる事が分かります。
もっともっと追求してみると、いろいろな事が明らかになりそうですが、それはまたいつかという事で、取り敢えず、今年はこのくらいにしておきましょうか・・・。

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