
いよいよ明日からシルバーウィークが始まります。とは言え、今年は暦の並びも天候も、今一つパッとしない様子! 特にまたまたやって来る台風のお陰で、行楽の予定どころか、日常生活まで脅かされそうです。
目次
台風16号は強い台風でも、大きくはない?
ところで、しきりと「強い台風」と言われる今回の台風16号ですが、不思議な事に「大きい」、「大型の」とは全く言われません。強い台風イコール大きい台風、というイメージをお持ちの方には、少々物足りないのではないでしょうか?さらに、「大型で強い台風」というのはよく耳にするものの、「小型で強い台風」とか、「中型で弱い台風」というのも聞きませんよねぇ…?
でも、これにはちゃんと理由があるんです。という事で、今日は台風の勢力の表し方をお勉強しましょう。
台風の勢力はこうして決まる
天気予報を見ても分かるように、台風に関する情報は、常に中心位置・最大風速・中心気圧、暴風域半径・強風域半径などを見当した上で発信されます。そのため、発信元には必ず、こうしたデータを収集した「台風諸元(たいふうしょげん」が存在している訳です。
とは言え、やっぱり台風と呼ばれるだけに、その強度は風の強さで決まる、と言って過言ではないでしょう。
台風の強さは風速で決まる!
そこで、この風速による台風の階級は、世界共通の基準として、WMOこと世界気象機関が明確に定めています。そして、それは、中心付近の10分間の最大風速で決まります。
- 風速17.2m/s未満・・・熱帯低気圧(Tropical Depression)
- 風速17.2m/s以上24.5m/s未満・・・弱い台風(Tropical Storm)
- 風速24.6m/s以上32.6m/s未満・・・並の強さの台風(Severe Tropical Storm)
- 風速32.7m/s以上43.7m/s未満・・・強い台風(Typhoon)
- 風速43.7m/s以上54.0m/s未満・・・非常に強い台風(Typhoon)
- 風速54.0m/s以上105m/s未満・・・猛烈な強さの台風(Typhoon)
台風の大きさは強風域で決まる!
一方、台風の大きさは、10分間の平均風速が15m/s以上の地域が中心部から半径何キロ程度広がっているか、で決まります。つまり、強風域の広い台風イコール、大きな台風という訳です。
- 半径200km未満・・・超小型(ごく小さい台風)
- 半径200km以上300km未満・・・小型(小さい台風)
- 半径300km以上500km未満・・・中型(並の大きさの台風)
- 半径500km以上800km未満・・・大型(大きな台風)
- 半径800km以上・・・超大型(非常に大きい台風)
日本の台風の勢力
こうして見ると、間違いなく、弱い台風や並の強さの台風もあれば、小さい台風や中型の台風というのはあります。まあ当たり前と言えば当たり前でしょう。
そこで、大型の弱い台風や小型の強い台風というのがあっても、決して不思議ではありません。実際、昔はよく、「中型で並の強さの台風」などという表現を耳にしたものです。
弱い台風や並の台風がなくなった!
ところが、上記のようなレベルの組み合わせでは、ごく小さい弱い台風、というのもやって来る訳です。
それでも、風速17.2m/sの世界は、台風教室7時間目 日本の風の強さを知ろう!で学んだ通り、決して嘗めてはいけない世界です。
しかし、ごく小さい台風と言われても、聞いている側にはその危険性が伝わりませんでした。結果、危機感が薄まり、レジャー中の水難事故や避難の遅れなどが相次ぎました。結果、数多くの人が死傷する事態を回避するのは困難だったのです。
そこで、20世紀末に台風の強さが誤解されないように表現が見直されました。つまり、2000年6月1日以降、「弱い」「小さい」「小型」「中型」「並」という表現は使わない、と改められたのです。
加えて、さらに分かりやすくするために、風速17.2m/s以上33m/s未満の範囲は全部まとめてズバリ、台風!と呼ぶことになりました。
そして、それを基準に、
- 風速17.2m/s以上33m/s未満・・・台風
- 風速33m/s以上44m/s未満・・・「強い台風
- 風速44m/s以上54m/s未満・・・非常に強い台風
- 風速54m/s以上・・・猛烈な台風
という4段階に区分されました。
小さい台風や並の大きさの台風もなくなった!
また、大きさについても、強風域が半径500km未満の場合には、あえて明確にしないのが賢明と判断!!
- 半径500km以上800km未満・・・大型(大きな台風)
- 半径800km以上・・・超大型(非常に大きい台風)
の2段階のみと定めました。
今時の台風の勢力
以上が、「小型で強い台風」や「中型で弱い台風」、あるいは、「大型で並の強さの台風」という表現を耳にしなくなった理由です。
ならば、強風域の半径が500kmに達していない場合にはどうするのでしょうか。何の事ない、大きさを明確にせず、強さだけを伝えます。さらに、強風域が500km未満で且つ、風速33m/s未満の場合には、台風の一言で表されてしまうのです。
例えば、今回の台風16号は、中心付近の最大風速が40m/sであるため、強い台風である事は間違いないものの、強風域の半径は最大でも330kmしかありません。そこで、「強い台風」と言っている訳です。
ちなみに、暴風域とは、風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性のある範囲で、円形で囲われた地域全てが該当します。とは言え、例えその枠からは外れていても、台風の渦の中に入っていれば油断禁物!
加えて、半径330kmと言っても、直径にすれば、その2倍になります。名古屋あたりに中心があれば、本州の広い範囲が強風域という事になります。
それを考えると、やはりシルバーウィークのレジャーは、十二分に気を付けなければいけないと言えるでしょう。
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