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前回の第1話でご紹介したように、油揚げや揚げ玉を乗せた「うどん」や「そば」は、関東と関西で随分物が違いました。

ではでは、何故にそのような奇妙な文化の相違が生まれたのでしょうか?

それを知るには、やはり『きつね』と『たぬき』のルーツを探る事が必要不可欠になるでしょう。

そうすれば、そもそも麺類とは縁もゆかりもない動物たちが引っ張り出された理由も分かりそうです。

きつねは大阪生まれ

麺料理におけるきつねとは、甘辛く煮た油揚げを乗せたうどんそばを指します。

そして、油揚げをきつねと呼ぶのは、キツネ様の好物だからではなく、

油揚げがきつね色だから

との事・・・!!

きつねうどん発祥の地

きつねうどんが初めて出したと思われるのは、大阪ビジネスの中心地・船場(せんば)に店を構えていた、松葉屋本舗(まつばやほんぽ)!

1893年(明治26年)から続く老舗うどん屋です。

初代店主の宇佐美要太郎(うさみようたろう)氏は、元々板前を目指していました。

そのため、寿司屋で丁稚奉公をしていたのですが、志半ばにして奉公先が閉店!!

当時の宇佐美氏はまだ、一人前の寿司がにぎれる訳ではありませんでした。

そして、和食の奥深さを追求する間もありませんでした。

そこで、唯一自信のあったうどんで勝負する事にしたのです。

寿司店経験者が開店したのですから、店には自慢のいなり寿司も置いていました。

今でこそ、そば屋やうどん屋でいなり寿司というのは珍しくありません。
一緒にオーダーするお客さんは大勢います。
その原型を作ったのも、もしかしたら、この店だったのかも知れません。

そして松葉屋では、素うどんをオーダーすると、別皿で付け合わせがついてきました。

それが、甘辛く味付けされた油揚げ。

ようするに、

いなり寿司に使うための油揚げがおまけに付いていた

という訳です。

きつねうどんの誕生

しかしこの油揚げ、寿司飯を包むと絶品なのですが、これだけを食べると、どうも味が濃くていけません。

特に薄味を好む関西人には、今イチだったようです。

ところが、うどんと一緒に食べると美味しいではありませんか!!

醤油仕立てのだしと、淡泊なうどん、そして、甘みをたっぷり含んだ油揚げ。

バランスが絶妙だったのです。

そのため、うどんに乗せて食べるお客さんが続出!!

ならばいっそ、始めからうどんと一緒に丼鉢に盛って出したのです。

それが瞬く間に大ヒット商品となりました。

コンコンうどんと呼ばれたこの料理。

忙しい船場の商人たちには、手間が掛からずに美味しく食べられ、メリットが大きかったのでしょう。

加えて、商売繁盛を司る、稲荷神社の守護神キツネの好物を食べられる!

これも、より一層料理への親しみを広めたものと考えられます。

この松葉屋本舗は、今も尚、その地で「うさみ亭マツバヤ」として営業中です。

店頭には、「大阪きつねうどん」の石碑が建てられています。

たぬきは江戸生まれ

一方のたぬき

今でこそ揚げ玉が乗っていますが、

昔は立派なイカの天ぷらが乗っていた

と言うではありませんか!!

たぬきそば発祥の地

しかしながら、実際に「うちが、たぬきそば発祥の地だ~!」と名乗る店舗は、未だありません。

ただ、江戸時代末期には、江戸の多くのそば屋に、とある人気のメニューがありました。

それを人々はたぬきと呼んでいたと言います。

その蕎麦に乗っていたのは、大きな仰木型のイカの天ぷら!

ですが、天ぷらはイカが実にスリムで、見た目を衣で膨らましたようなもの。

食べてビックリ!!「騙された~!」

いかにも江戸っ子らしい、しゃれた駄洒落感覚から、たぬきと呼ばれていたと言われています。

それに、江戸前天ぷらはごま油で揚げるため、どうしても表面が黒っぽくなってしまいます。

すると、先のキツネと油揚げの関係と同様、タヌキ色になるという訳です。

また、江戸では黒そばをよく使う事や、関西に比べてだしの色が濃いです。

薄い茶褐色の『きつね』に対し、黒っぽい『たぬき』というのは、実によく出来た表現だと言えるでしょう。

たぬきそばの誕生

今のようなたぬきそばやたぬきうどんが登場したのは、大正時代に入ってからの事だと見られます。

元々、そば屋に天ぷらは付きもの!

日々多くのエビ天を揚げています。

そうすると大量の天かす、即ち、揚げ玉が出る訳です。

それを捨てるのは勿体ない!

という事で、お客さんに無料で提供されるようになりました。

すると、それをそばに入れる人が続出!

確かに、そうすれば、適度な油の香りと濃厚さを出せます。

あえて高価な天ぷらそばをオーダーせずとも、安価な掛けそばが美味しく食べられるのです。

これは庶民には嬉しい!

けれど、そうなると店としては、無料で提供するなんてお人好しな事はしていられなくなります。

そこで、最初から丼鉢にそばに揚げ玉を乗せた蕎麦をメニューの一つとして出すようになったのです。

揚げ玉は、天ぷらのネタのない外側だけです。

それを受け、

ネタ抜き→たぬき

と呼ばれるようになりました。

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似ていないようで似ている、きつねとたぬき

大阪で生まれた、油揚げを使ったきつねうどん

東京で生まれた、揚げ玉を使ったたぬきそば

それぞれ全く異なるものでありながらも、どこか似たような流れで誕生した訳です。

では何故、関西でたぬきがきつねに、関東できつねがたぬきに化けたのか?
さらに、関西でも京都では、きつねとたぬきがどんな変身を遂げるのか?

その謎は最終回となる→気を付けよ!関西と関東の『きつね』と『たぬき』の化かし合い(第3話)で・・・。

関西と関東のきつね・たぬき早見表

油揚げ+うどん 油揚げ+そば 揚げ玉+うどん 揚げ玉+そば
関西 きつね(うどん) たぬき(そば) ハイカラうどん ハイカラそば
関東 きつねうどん きつねそば たぬきうどん たぬきそば

関西

油揚げ+うどん きつね(うどん)
油揚げ+そば たぬき(そば)
揚げ玉+うどん ハイカラうどん
揚げ玉+そば ハイカラそば

関東

油揚げ+うどん きつねうどん
油揚げ+そば たぬきそば
揚げ玉+うどん たぬきうどん
揚げ玉+そば たぬきそば
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