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2017年3月10日の日本経済新聞夕刊に「美容医療の誇大表現禁止」との記事が掲載されました。政府が医療法の改正案を閣議決定し、美容医療関係のトラブルに対処する意向のようです。

もちろん政府が美容整形を規制するわけではなく、医療機関全体の安全性向上を目指す、その一環です。医者をどこまで信じるのか、そういった問題にもなるようです。医療業界には素人からは見えない部分が多すぎるのも事実だからです。

医者は意外に縛られている

テレビドラマを観ていると、医者はけっこうやりたい放題やっているようにも思えますが、意外と縛られており行動が制限されています。基本的に日本でフリーの医者はありえません。法律的に考えると、思うようにできないのが実態のようです。

1.医療法の目的は患者優先

医療は特別な領域です。人間の生き死にがかかっていますし、その人や家族の人生を左右することになるからです。一方で日本には国民皆保険制度があります。金持ちでも貧乏人でも一律に同等の医療が安価で受けられる!だからこそ安心して暮らせるのです。

それを支えているのが医療法です。その第一条において次のように定めています。

(前略)医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする

わかりやすく言えば、患者側の利益を優先する!これが医療の第一原則です。医者を目指すものは、常にその姿勢でいてもらいたいものです。
参考「東大理3で面接をする?本当に求められる医者が選ばれるのか

儲かるから医者になる?それも事実でしょうが、自分の利益を優先してはならない!それが医者としてのモラルになるのです。保険医療を行っていれば、実費は補填されるからです。考え方によれば、堅実な商売でもあります。

2.標榜科目は限られる

医療機関の看板には、様々な診療科目が表示されています。基本的に医師免許を有していれば、どんな診療科を標榜することも可能です。例えば大学で所属していた研究室が眼科であっても、実際に開業するクリニックは泌尿器科!それも可能です。ただ現実問題としてやらないだけです。

とはいえ地方の病院に勤務すれば、どんな患者が来るかわかりません。夜間の当直も、原則としてすべて診なければなりません。さらに飛行機などで「お医者様はいませんか?」問われた時も、自信がなくて堂々と名乗れない医者もいるとか。

一方で患者さんを混乱させないために、掲示できる標榜科には一定の決まりがあります。詳細は、下記サイトを参考にしてください。具体的な例として、整形科、内科それぞれ別に表示することは可能ですが、「整形内科」という事実上ありえない名称を使ってはいけません。
厚生労働省|広告可能な診療科名の改正について

3.医者は来るものを拒まず

医者は原則として、来た患者の診察を拒んではいけません。こちらは医師法第19条に規定があります。

「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」

そのため反社会的な組織に属している人であっても、病人であれば診る義務があります。ある意味で医療現場は治外法権です。犯罪者であっても、まず治療優先であり、医師の判断が重視されます。だからと言って変な便宜を図ってはいけない!当たり前です。

もちろん親の仇が患者として来た場合も、医師として適正に対応しなければなりません。ちなみに、アメリカのレーガン元大統領は、銃弾で撃たれ病院に運ばれた際、医師に対して「皆さんは共和党員だよね」質問したとか。

4.治療中に患者が死亡しても罪を問われない

神の手を持つ天才外科医であっても、弘法も筆の誤り?ミスが起きることもあるでしょう。最悪の場合には、患者が命を失うこともあります。そこで問題になるのが、医療ミスか?それとも避けられない死だったのか?です。

基本的に医師は、医療行為上における傷害や死亡に関して罪を問われることはありません。そうでなければ、誰も医者を志せないでしょう。とはいえ昨今は医療訴訟が増えています。だからトラブルの多い産婦人科や小児科のなり手が少ないとか?両刃の剣です。

ここで用いられるのは刑法第35条

「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」

つまり医療行為は「正当な業務」に該当するとの解釈です。

また民法第698条でも

「(前略)悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない」

と定められています。もちろん「重大な過失」これが論点にはなりますが。

ホームページは広告なのか

ちょっと硬い話が続きましたが、実際に医療機関はどこまで宣伝してよいのか?原則誰でも受け入れる!医療機関は平等が原則です。そのため誰でもウェルカムにしておく一方で、過度な客引きは、公正ではない?グレーゾーンがあるのも事実です。

1.100%の保証はできない

政府が問題にしているのは、医療機関のホームページに虚偽や誇大な表現がある?そうした点です。実際に苦情なども多いようです。特に美容系は正解がありません。医療的には大成功であっても、患者が満足しなければ、それは大失敗です。

そういう意味では事前のカウンセリングが大切です。患者さんを納得させることが第一に求めれます。医者は医師法の関係上診察を拒めませんが、医学的に正しくない過度な手技は、患者さんの身体を優先して、医療法の観点から治療を拒むことが可能です。

一方で医療機関のサイトには「100%の安全」を謳う言葉もあります。しかしどんな簡単な手技であっても100%の成功はありえません。そもそも患者さんの体質なども個々に異なります。同じ薬を使っても、治る人と副作用が出る人もいます。これは患者側も知っておくべきことなのでしょう。

2.体験談は真実なのか

多くの美容クリニックでは、ウェブサイトに生々しい体験談を掲載しています。実際に写真入りでビフォーとアフターを表示することもあります。そうしたモニターを募集することも稀ではありません。もちろん出ているのはすべて成功例です。

神業を持つ医師であっても、上述のように患者が納得しなければ、事実上の失敗です。クレームの中には、そうしたタイプもあるでしょう。とはいえ実際に副作用が出た、明らかな医療ミス!腫れ、傷、肌荒れなどのトラブルも少なくないようです。
参考「レーシックの術後に抱える共通した5つの悩み

サクラはいないと考えたいですが、体験談はどこまで真実なのか?これから手術を受けようとする人は、鵜呑みにし過ぎない方が良さそうです。カウンセリングに際しても、甘い言葉に流されてはいけません。

3.医療ミスはないのか

上述のように、医者は過誤があった場合でも法的に守られています。だから思い切った治療が行えるのです。とはいえ本当に医療ミスはないのでしょうか。政府が今回規制を強める背景には、群馬大学などで生じたトラブルがあります。

医者が実績を上げるために無理な治療や手術をしていないのか?

患者にはわかりません。

ウェブサイトに示されていることは、本当に正しいのか。

客引きのために過度な表現をしていないのでしょうか。
参考「美容整形の技術と意識は驚くほど変わっています

もちろん現場に一定程度の自由度を与えないと、医師は治療が行えないでしょう。ただし医療的に正しい選択を本当にしたのか?誰が判断できるのでしょうか。そういう意味では、昨今進んでいる手術のビデオ撮影は、重要な証拠になるでしょう。

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医者をどこまで信じるか

今は、何かあれば患者自身が直ぐにネットで調べます。どの医療機関へ行けばどんな治療を受けることができ、どれだけ信頼できるのか?年間の手術件数などを掲載するサイトもあります。とはいえどこまで信じることができるでしょうか。
参考「医療に正解はあるのか?ネット検索の是非と医療界や人体の不思議

医療の世界は、基本的に性善説で成り立っています。正しい助言を受けていると思いたいです。ならば変に法律で縛らない方が、医者もやりやすくなるのかもしれません。しかしそうなるかどうかは、それこそ医者の良識に委ねられています。

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