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2017年6月28日に厚生労働省は、東京・大阪そして福岡にある計11の医療施設に対して、再生医療安全性確保法違反の疑いで臍帯血(さいたいけつ)を使った再生医療行為の停止命令を出しました。一説によると、今回発覚した事例は氷山の一角に過ぎないとも言われます。

ワラをもすがる思いでたどり着いたクリニックにおいて、高額な医療費を支払った上、それが違法行為だと知った患者は、どんな気持ちなのでしょうか。同じことが起きないように国が一定の監視をすべきだし、患者側も正しい知識をもつ必要はありそうです。

さい帯血を無届けで投与 11医療機関に再生医療の一時停止命令 | NHKニュース

再生医療とは

そもそも再生医療とは何でしょうか。文字通り、臓器や細胞を再生させることです。再生医療は昨今のはやりでもあります。とはいえ実際の効力に関しては、疑問視される点が多くあるのも事実です。誤解も少なくないようです。

再生医療は、さまざまな細胞に分化できる幹細胞を使います。著名なのはノーベル賞を受賞したiPS細胞を利用した方法です。一部安全性の問題も残っていますが、確実性はアップしています。あと10年もすれば治せない病気はなくなる?期待が持たれています。

人間一人がもつ細胞数は60兆個とも言われますが、それがたった一個の受精卵から分裂してできています。そのすべての細胞には同じDNAが含まれています。遺伝子の発現のさせ方によって、理論上はあらゆる細胞に変化するはずなのです。それが再生医療の根本原理です。

臍帯血とは

今回問題となった臍帯血(さいたいけつ)とは何でしょうか。これは、へその緒や胎盤に残っている血液です。そこには血液成分の源になる造血幹細胞が含まれています。
「胎児の命をつなぐ綱なので、成長を促す未知の物質があるはず!」
そう考える人も多いようです。

臍帯血移植は当人の治療に使えます。そのため、へその緒を専門の施設で保管してもらう人も珍しくありません。他人の臍帯血を利用することも可能です。適合性などの検査をすべきですが、骨髄移植よりも弊害は少ないと報告されています。

臍帯血移植の目的は白血病などの重篤疾患に対する治療です。しかし、がん治療やアンチエイジング美容に使用した事例もあったようです。胎盤の英語名であるプラセンタを用いた美容行為が合法的に行われているので、その延長と安易にとらえたのかもしれません。

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再生医療の停止命令を受けた11医療施設

NHKの報道によれば、今回再生医療の停止命令を受けたクリニックは以下の11施設です。

東京は8施設

渋谷区

  • 表参道首藤クリニック

港区

  • クリニック真健庵
  • 赤坂AAクリニック
  • 六本木ドクターアンディーズクリニック
  • 東京国際美容クリニック

千代田区

  • アベ・腫瘍内科・クリニック

練馬区

  • 花岡由美子女性サンテクリニック

品川区

  • 品川荏原ライフケアクリニック

大阪は2施設

大阪市

  • 大阪タワークリニック
  • 恵聖会クリニック心斎橋院

福岡は1施設

福岡市

  • 天神皮ふ科

臍帯血による再生医療の問題点は何か

今回ニュースとなった背景には何があるのでしょうか。問題点を整理してみましょう。

1.臍帯血を適用外の医療行為に使った

臍帯血を使った再生医療は既に実際の医療行為として行われています。Wikipediaによれば、臍帯血移植が対象となる疾患は以下の通りです。

  • 急性リンパ性白血病
  • 急性骨髄性白血病
  • 慢性骨髄性白血病
  • 若年性骨髄単球性白血病
  • 骨髄異形成症候群
  • 悪性リンパ腫
  • 多発性骨髄腫
  • 副腎皮質ジストロフィー
  • 骨髄巨核球造血不全性血小板減少症
  • 先天性赤芽球癆
  • Fanconi貧血
  • 遺伝性ニューロパチー
  • Hurler病
  • Hunter病
  • 再生不良性貧血
  • 重症先天性好中球減少症
  • サラセミア
  • X染色体性リンパ増殖性症候群

かなり多くの疾患に有効と考えられますが、そのほとんどは難病です。一般の人にはほぼ関係はなく、美容やアンチエイジングでは効果が確認されていません。

2.臍帯血による再生医療を無届けで行った

今回の問題点として重視すべきなのは、臍帯血による再生医療が無届けで実施されていたことです。もちろん、医者が医療行為をすること自体に問題はありません。しかし、今回のように臍帯血を患者に投与するような再生医療については、再生医療安全性確保法(2014年11月施行)に基づいたルールを守らなければなりません

どのようなルールかというと、
この法律により再生医療を行う場合、医療機関は安全性や効果の観点から

  • 厚生労働省が認定した専門委員会の審査を受ける
  • また厚労省に対して治療計画を届け出る義務がある

というものです。

しかし上記の11施設は、臍帯血による再生医療を無届けで行っていました。
届けていれば問題ないのか?第一関門はクリアしているでしょう。とはいえ、使い方が適正だったのか?別な問題があります。それが氷山の一角と言われる理由です。

3.自由診療なので高額だった

今回の対象となったクリニックは、いずれも自由診療で行っていました。
本来、厚労省に認可されている医療行為なら健康保険が使えます。そのため患者は3割負担です。高齢者なら1割で済みます。さらに高額療養費制度を活用すれば、月額5万円程度に抑えることも可能です。もちろん、臍帯血移植でも健康保険が使えます。臍帯血移植は1回につき総額で約66万円しますが3割負担なら20万円です。

今回厚生労働省から命令をだされた11施設は、もともと違反をしているとわかっていて診療していたのではないでしょうか。ばれたくないから保険を使わなかったのでしょう。

そもそもどんな治療でも、対象となる病気以外に薬を使ったり手技を適用したりすれば保険の審査が通りません。だから、あえて自由診療という道を選んだのでしょう。報道によれば、保険適用外の臍帯血による治療に100万円以上を払った患者がいたとか。法律に違反している可能性があるから保険が使えないという説明は、患者に事前に行っていたのか?疑問です。

4.患者の弱みに付け込んだのか

上述のように臍帯血移植が適用となる病気は難病です。専門的な治療を受けても治るかは微妙です。患者さんとしては、ワラをもすがる気持ちでクリニックや治療法を探しています。そこで見つけた、もしくは紹介されたのかもしれません。

健康になれるなら、いくらでもお金を払いたいでしょう。そうした患者の弱みに付け込んだのでは?こちらも疑念があります。現状において健康被害は確認されていないようですが、問題の11施設における臍帯血の再生医療によって病気が治った?そうした報告もないようです。

5.臍帯血による再生医療を美容目的に使った

百歩譲って、医療の発展のために、試しにやってみた?あってはならないことですが、やってみたくなる気持ちは、医師側・患者側、双方にあったことは否めません。成功すればもうけもの、失敗しても諦めがつきます。

とはいえ、一部の報道によれば、アンチエイジングや美容目的で使われていたケースがあったようです。テレビで映ったクリニックの看板には、美容系の診療内容が示されていました。

もちろん、プラセンタと呼ばれる馬や豚の胎盤エキスを美容に利用するケースが一般化しています。サプリメントも売られています。そうした感覚で用いられたのかもしれません。臍帯血も胎盤の一種だからです。医療倫理としてどうなのか?ここが問われそうです。

6.他人の臍帯血を勝手に使った

もう一つ許せない点は、他人の臍帯血を勝手に利用した疑いがあることです。臍帯血は財産です。また遺伝情報が含まれているため、究極の個人情報でもあります。それを本人に無許可で使用していたのであれば、そうした点も追及されるべきでしょう。

臍帯血は、元の所有者が後々病気になった時のために、専門の医療機関へ預けておけます。もちろん保管料だけで数十万円以上します。
中には、

  • 委託していた施設が廃業して消息不明?
  • 廃棄?
  • 他機関へ売却された!

このようなトラブルもあるようです。

実際に今回使われていた臍帯血は、茨城県にあった民間の臍帯血バンクが破綻した際に流出したと考えられています。そのためもっと多くの医療施設に渡り、現在でも使われている可能性は否めません。

7.臍帯血移植のイメージが悪くなる

今回の事件で、臍帯血移植が悪者になってしまう可能性もあります。そうした風評被害が心配です。正しく患者さんに対して行われた治療であっても後々差別が生まれないか?世間のイメージを払しょくするのは難しいものです。そういう意味でも罪深い行為です。

だれを信じるべきなのか

病気になって医療機関を受診しますが、その際に医師から言われたことを、普通は信じるでしょう。もちろん今回の騒動に関して、患者への健康被害は生じていないようです。とはいえ大金が支払われています。それで効果はあったのか?

いったいだれを信じるべきなのでしょうか?専門的すぎて難しいことではありますが、患者側も、最低限の知識を持っておく必要はありそうです。被害を最小限に止められるからです。

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