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一般の人にはあまり身近ではありませんが、規制緩和の一環として農薬の安全性試験を一部省略するとの議論が登場しています。医薬品のようにジェネリック品を普及させたいとか。

最終的に農薬の値段が下がり、それが農産物価格に反映されるのであれば、消費者としても望ましいでしょう。それこそが規制緩和の目的です。しかし一方で食の安全は守られるのでしょうか。

農薬とは

農薬とは、農業用薬剤の略称とも言われており、1948年に制定された農薬取締法によって定められた農業に用いられる薬剤全般を指します。分類の仕方も多様です。

1.使用目的による分類

殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺鼠剤、除草剤、補助剤などに分かれます。ちなみに補助剤とは、単独では効果がありませんが、農薬の効果を強めるために添加される薬剤です。

2.使用形態による分類

液剤、粉剤、粒剤、ガス剤、煙霧剤、糊状剤(塗布剤)などに分かれます。さらに液剤の中には、溶剤、乳剤、水和剤などもあります。

3.化学組成による分類

無機化合物農薬と有機化合物農薬に分けられます。最近では天敵を使って害虫を防除する生物農薬の利用が推進されています。

なお農業用薬剤なので、ホルモンなどの成長促進剤や発芽抑制剤なども農薬の範疇に入ります。

農薬の値段を安くしろ!

今回の議論は、農協改革の一環と考えるべきでしょう。つまり日本の農産物が高いのは、生産費、すなわちコストが高いからです。その根本原因は、農業資材、例えば農薬や化学肥料などです。

先日の国会質疑でもありましたが、農協から買うよりホームセンターの方が安い!しかし農家は農協からしか買えない!一般の人が考えてもおかしな話ですね。ではなぜ農協から買う農業資材が高くなるのか。

ホームセンターで安く買えるなら、たぶん農家がまとめ買いすれば、もっと割り引いてくれるはずです。だったら農薬メーカーが卸す値段は、そんなに高くない?それを農協など様々な段階でマージンを取る!そこにこそメスを入れるべきなのです。

農家には「つきあい」があります。別のお店から農薬を買うと、自分たちの生産物を農協が買ってくれない!そういう裏事情があります。泣く泣く農協と取引している農家が少なくないのも現実です。
参考「日本の農業を支えてきた農協が今、抱える3つの問題点

安全性試験を省略したから値段が安くなる?多少はそうでしょうが、議論の根本が違っているような気もします。

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ジェネリックを普及させる

議論の中に、ジェネリック農薬を普及させる!そんな話もあるようです。

とはいえジェネリックとは何か?医療品では一般的になりましたが、正規品と「ほぼ」品質は同じ製品のことです。特許切れの製法を真似て作ります。そのため最初の開発費がいらない!だから安く製造、販売できるのです。

車で言うと、純正品と市販品の違いみたいなものです。市販品の方が安いためお財布には優しいですが、トラブルに100%保証できるのか。結果的に安い買い物かどうか、難しい判断です。

薬の場合は、有効成分は同じですが、その他の添加物が違います。つまり薬のほとんどは、添加物だからです。例えば液剤であれば、ほとんどが水です。農薬でもそうなるのか?

ちなみに我が家にあるスプレータイプの殺虫剤、ホームセンターで買ったものですが、成分表を見ると、有効成分と思われるのは合計で0.045%、そして水・界面活性剤等が99.955%!何を買っているのかわかりませんね。

ジェネリック農薬で、効果が同じ、有害性がなければ問題ないのでしょうが、規制緩和によって、それが保証されるのか。そもそも誰が責任を持ってくれるのか。

農薬はポジティブリストを使う

農薬は、作物や家畜に害を及ぼす雑草や虫などを殺すための薬品です。とはいえ何でも使えるわけではありません。そこには一定の基準があります。特に農薬で注意したいのは、それが食品にまで残るかどうかです。それを残留農薬と呼びます。

言い換えれば、肉や野菜として売られる際に農薬が付着、混入していなければ、どんなに強力な薬を使っても問題はないのでしょう。一方で農家の人に対して危険はないのか、または散布して空中を漂った際、これも有害性はないのか。そうした面からも規制は必要です。

一般的に農薬の場合には、ポジティブリストが使われます。つまり基本的にすべて禁止!だけどリストにあるのは使用してよい!言い換えれば安全を保証できるものだけを対象にしています。もちろん使用量に制限はあります。
参考「コトバンク:ポジティブリスト

ちなみにネガティブリストと呼ばれる方法もあります。こちらは原則すべてOK!しかしリストにあるのは使用禁止!この方式だと、未知の有害物質を規制できない!そのため農薬ではポジティブリストが使われます。
参考「コトバンク:ネガティブリスト

安全性試験を一部省略

ポジティブリストを使っていれば、残留農薬の問題は心配ないと考えられます。だから安全性試験の一部を省略しても大丈夫!そういうスタンスがあるようです。では具体的にどうするのか。

植物の種類によって、薬や病害に対する反応はほぼ同じと考えられます。例えば葉物野菜、バラ科植物などです。これまでは使うすべての作物に対する試験を行ってきました。しかし今後は、代表的な作物だけチェックすればOK!手間が省けます。

これまでの経験上、そして理論上は、問題ないようです。これまでは万全を期してきた、そのために費用が高くなった。本当に安全ならば、省略しても大丈夫なのでしょう。本当に安全ならばです。

トクホの二の舞にならないか

先日、トクホ(特定保健用食品)でトラブルがありました。規制緩和したことによって、メーカーへのチェックが甘くなりました。トクホの場合なら有害性はないでしょう。単に効果がないだけですから。
参考「トクホは信頼できるのか?消費者庁が成分を調べさせます

とはいえ農薬でそのような事態が起きたなら、効果がないだけで済むでしょうか。かつて成分が違う肥料が売られていた事件もあります。こちらもチェック漏れでした。知らずに使ってしまった有機栽培農家にとって、致命的なエラーとなりました。

農薬の場合は、危険な薬が使われることはないのか?ジェネリック農薬でも正しい製法に則って作るのか。トクホの二の舞が危惧されます。

遺伝子組み換え作物の問題

農薬で気になるのは、遺伝子組み換え作物の話です。近年は、特定の雑草にだけ効く農薬が開発されています。言い換えると、農薬に強い農作物とセットで販売されます。

もちろん遺伝子組み換えは、ある程度確立された技術です。一部の団体などが煽るようなリスクは少ないと言えるでしょう。とはいえどこまで安全性が保障されているのか。特許や機密を理由に詳細を開示してもらえません。

農薬の規制を緩和するのであれば、情報公開に関しても制度を整えるべきでしょう。一部の人たちだけの利益になるならば、規制緩和の意味がありません。

食の安全は守れるのか

経済を活性化させるために規制緩和をする。よいことです。それによってコストが下がり、消費者も安い物が買える!誰にとってもメリットだらけです。そのシナリオが正しく行われていればです。

とはいえ必ず誰かがズルをします。その責任を取る人がいません。更迭しただけでは意味がありません。お金をもらっても、健康は取り戻せません。そういうことを本当に考えているのか。食の安全は守られるのでしょうか。

農薬は、虫や雑草などを殺せる危険なものです。人間にとっても少なからぬがあります。値段が高い理由は安全性試験があるからでしょうか。滑稽な議論に終始している議員やお役人、当該企業のお偉いさんたちは安全な高級食品が買えるから、気にならないのでしょうね。

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