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寒くなる季節は温泉が恋しくなりますね。日本では至る所に温泉があります。火山列島である恩恵の一つです。もちろん観光地ならば安全と言えるのでしょうが、人気の温泉でも注意が必要です。

つまり温泉から出てくる硫化水素は有毒です。過去にいくつかの中毒事件も発生しています。正しい温泉の入り方、リスクや効能について知っておくことが不幸な事故を防ぐためには必要なようです。

硫黄に臭いはない

テレビ番組などで温泉の取材をする際に、硫黄の臭いがする?そうした表現があります。もちろんわかりやすい説明をしているのでしょう。そこを突っ込んではいけないのでしょうが、基本的に硫黄自体の臭いはありません。

つまり硫黄とは、酸素や水素などと同様に原子の名前、すなわち元素名です。個々の原子自体には何らかの臭いはありません。とはいえ硫黄が水素や酸素と反応して硫化水素もしくは二酸化硫黄などが生じます。これがいわゆる硫黄の臭いを発することになります。

硫化水素とは何か

温泉施設でも発生しやすい、硫化水素とはどのような物質なのでしょうか。水に溶けやすい火山性ガスの一種であり、化学記号で現すとH2S、酸性を示します。いわゆる卵の腐ったような臭いがあり、まさしく温泉のイメージかもしれません。

無色で空気より重い気体であり、火が点くと薄青色の炎が上がります。鉄、銀、銅などの金属と結びつきやすく、錆の原因になります。そのため温泉地へ高価な貴金属類を持ち込むのは避けた方がよさそうです。

人間にとっては猛毒であり、薄い濃度であっても目や皮膚などを刺激します。肺に取り込まれると酸素の吸収を阻害します。そのため呼吸麻痺に陥り昏睡、発見が遅れると死に至ります。

ちなみに硫化水素は、飲食店などの排水からも発生することもあり、若干ですが人間の排泄物にも含まれています。嫌気性細菌が腸内で食物中のタンパク質に含まれる硫黄から硫化水素を作り出すようです。だからおならは臭い!

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硫黄泉には効能がある

一歩間違うと危険な硫化水素、硫黄化合物ですが、温泉としての硫黄泉にはいくつかの効能が知られています。

1.血流がよくなる

最近は炭酸泉なども流行っていますが、硫黄泉も同様に皮膚から毛細血管に吸収されると、血管拡張作用を持つので、血流がよくなります。そこから高血圧や動脈硬化などの循環器系疾患に対する予防効能があると謳われることがあります。

俗に硫黄泉は、メタボの湯とも呼ばれ、生活習慣病の改善につながるとして愛好家も多いようです。

2.皮膚症状を改善する

皮膚の角質を軟化させる、もしくは溶解させる作用があるため、角化症、苔癬、慢性的な皮膚疾患の改善効果が期待できます。

硫黄には殺菌効果も知られているので、疥癬や水虫、外傷の回復を早める可能性も示唆されています。

さらにニキビや吹き出物を治す、メラニンを分解して美白を促すなどの美肌効果もある?女性には嬉しいですね。

なおアトピー性皮膚炎に対しては、濃度と殺菌度合いが関係してきます。肌を刺激しすぎないように気を付けて入れば、改善効果はありそうです。

3.解毒作用がある

硫黄泉は肝臓における解毒機能を高めることが示唆されています。そのため金属中毒や薬物中毒の療養に使われることがあります。

また硫化水素ガスは痰を出しやすくすると言われているので慢性気管支炎などにも適していると考えられています。

一部飲用に供されることもあり、消化器系疾患、便秘、痛風、糖尿病にも効くとの話があります。ただし事前に飲用可能かどうか確認しましょう。間違っても湯船のお湯を直接飲んではいけません。専用の蛇口を使いましょう。

硫化水素の注意したいことは

まさしくクスリはリスクです。毒性があるからこそ、健康にも貢献するのでしょう。では硫黄泉へ入る際に注意したい点について考えてみましょう。

1.中毒に注意

古い法律ではありますが、温泉法の定義によれば、硫黄化合物に関してお湯1キログラム中に総硫黄量が1ミリグラム以上あれば硫黄泉になります。また同2ミリグラム以上あれば療養泉として謳うことが可能です。

一方で環境省が2006年に告示した「公共の浴用に供する場合の温泉利用施設の整備構造等に関する基準」によれば、浴槽の湯面から10センチの高さ、おおむね人間の口や鼻に該当する位置ですが、そこの硫化水素濃度は20ppmを超えてはならないとする基準があります。
参考:公共の浴用に供する場合の温泉利用施設の設備構造等に関する基準

十分な換気施設がない場合には中毒を起こす可能性があります。あっという間に意識がなくなることも稀ではありません。冬であっても窓を開けるなど空気の循環に努めましょう。

なお上述したように硫化水素は空気より重いので、床面辺りに溜まります。そのため浴室の床で横になると過吸引のリスクが高まります。注意しましょう。

2.肌荒れに注意

硫黄泉には皮膚疾患の改善効果がありますが、元々肌が弱い人、乾燥肌であれば、逆に症状を悪化させるリスクもあります。そのため初めての人はいきなり入らず、皮膚が厚い部位に少し流し、様子を見てから浸かるようにしましょう。

3.妊婦さんは注意

一時期、妊婦さんは温泉に入ってはならない!そんな説が流れました。しかし医学的な根拠はないとか?そこで環境省も2014年、妊婦さんに対する規制をなくしました。

一般の人と同じく通常のように入ることに関しては、問題がないようです。ただし42℃以上、逆に35℃以下の場合には、血圧を乱す可能性が示唆されているので控えた方が良さそうです。

また妊娠すると皮膚が敏感になりやすいようです。そのため硫化水素の刺激で痒みを訴えることがあります。特に敏感肌のケースでは気を付けたいですね。

もちろん妊婦さんに限りませんが、転倒に注意しましょう。温泉場は特に足場が滑りやすかったり不安定です。つわりがあれば貧血の心配もあります。

事故を防ぐには

国の基準もあり、各温泉施設も注意はしているでしょうが、それでも不測の事態は起きてしまいます。少なくとも個人ができることはやっておきましょう。

1.臭いに注意する

硫黄泉には独特の臭いがあります。そのため鼻につく、また目を刺激するような感覚があれば、直ぐに入浴を中止しましょう。また浴室に入った瞬間にそのような状況があれば、窓を開けるなど直ぐに換気をしましょう。もちろん従業員の人に伝えることも重要です。

2.一人で入らない

温泉の楽しみ方は様々ですが、硫化水素が強そうな場所は、1人では入らないようにしましょう。もちろん同時に中毒症状を起こすこともありますが、どちらかが救出に回れる、助けを呼びに行く、発見が早まる可能性は高まります。

3.適度に切り上げる

療養の場合には、長湯に浸かりたくなります。とはいえ適度に切り上げましょう。また身体を洗うなど、お湯から出たり入ったりを繰り返しましょう。

自宅のお風呂でもありがちですが、暖かいお湯に漬かっていると眠気に襲われることがあります。とはいえ実際は脳への血流が減り一時的に失神しているようです。そのままお湯に潜ってしまい窒息する危険があります。温泉ならば気持ちよくなるのでなおさらです。常に意識を確認しましょう。

環境省が調査を始めました

環境省は、温泉における硫化水素中毒を防ぐため、都道府県や保健所、そして各温泉施設に対する調査を2016年10月末から開始したようです。今さらという気もしますが、実態が明らかになることが期待されます。

国の基準は、安全のためではありますが、規制は諸刃の剣です。安易な中止ではなく、火山国日本における自然の恵みである温泉を賢く利用できるように、官民そして個々人が協力して作っていくべきなのでしょう。

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