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小さな記事ですが見過ごせないニュースが2017年6月22日に流れました。風邪薬の成分であるアセトアミノフェンの製造工程に無届けの中国産が混ざっていました。

とはいえアセトアミノフェンとは何でしょうか?私たちは知らない間にアセトアミノフェンを服用しています。具体的には、アセトアミノフェンはどんなメカニズムで働くのか?今回の騒動における問題点を含めてまとめてみましょう。

中国産アセトアミノフェン混入事件の概要

アセトアミノフェンに中国産が混じっていた!テレビや新聞で一部報道されました。とはいえ、一般の人にはよくわからないニュースだったでしょう。幸いなことに、中国産のアセトアミノフェンを服用して何らかのトラブルや副作用があったという報告はありません。

簡単にまとめると、アセトアミノフェンの国内シェア8割を占めるとも言われる和歌山県の化学品製造メーカー山本化学工業は、無届けで安価な中国産を混ぜて作った製品を、製薬企業に対し薬の原料として出荷していたようです。

供給が間に合わなかったから!それが混ぜた理由のようです。利益の水増しは考えていなかったのか?疑い始めるときりがありません。

中国産アセトアミノフェン混入の問題点は何か

今回の事件に関して、詳しく報道されていない問題点のいくつかを考えてみましょう。

1.法律に反する

そもそも何がいけないのか?第一は、厚生労働省へ届け出ていた薬の製造方法、原料と異なっていたことです。厚労省が認可している薬は、認可通りの材料・製造方法に従わなければなりません。それを少しでも変える際には、再度認可を取り直す必要があります。

故意かどうかは問わず、違ったことをやっていれば医薬品医療機器法(旧薬事法)に触れてしまいます。コスト削減、画期的な技術が開発されたとしても、あらためて認可申請をすべきなのです。ここにも隠れた問題点はあります。

なお2017年6月26日に追加報道がありました。つまり山本化学工業はてんかん薬の成分であるゾニサミドに関しても無届けで材料を変更していたようです。ここまでくると、悪いことだとわかっていながら変更した?うっかりミスとは言えないでしょう。

今回の事件で心配される点は、法律違反が確定すれば、最悪のケースとして、一時的ではあっても同社におけるアセトアミノフェンの製造が中止になることです。厚生労働省、そして管轄する和歌山県による詳しい調査が待たれます。

2.ほぼ独占的に供給されていた

薬の供給面からも問題があります。つまり、大切な化学品であるアセトアミノフェンが地方にあるたった1社によってほぼ独占的に供給されていた、という事実です。たとえば同社で何らかのトラブルが起きていれば、国内の医薬品製造に大きな影響が起きていた可能性もあるからです。

2017年の5月下旬に立ち入り調査を行い、そこで中国産アセトアミノフェンの混入が発覚したようです。なぜ今なのか?つまり花粉症も落ち着き風邪薬のオフシーズンだからです。これが冬に「見つかって」いれば?アセトアミノフェンの流通面においてパニックだったかもしれません。

少なくとも数年前から中国産のアセトアミノフェンを使っていた?そんな報道があります。前々から違反の事実がわかっていたけど、時期を考慮して今にした?それが良かったのか悪かったのか、あらためて考えるきっかけになりそうです。

3.中国産は信頼できるのか

失礼な言い方ではありますが、中国産は信頼できるのでしょうか。化学物質としての違いはないでしょうが、純度などの問題があります。本当に正しい物であれば、製造原価が安い物を使う理由もわかります。

ただし薬です。供給の滞る恐れがあったとしても、安全第一にすべきでした。製薬業界は体質がまったく変わっていません。薬害問題はなくならないからです。データ改ざんや副作用報告を隠蔽(いんぺい)する事件は数え上げるときりがありません。

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アセトアミノフェンとは

そもそもアセトアミノフェンとはどんな物質なのでしょうか。科学的に考えてみましょう。

1.アセトアミノフェンの化学的組成

アセトアミノフェンは100年以上も前に発見された古い化学品です。それだけ信用力もあり、世界的に鎮痛解熱剤の成分として使われています。後述するように多くの医薬品で使われています。だれもが一度は利用しているはずです。

アセトアミノフェンを化学的にみると、中心にベンゼン環があります。そこにアミノ基とアセチル基が続いています。分子量は151.169、C6H4(OH)NHCOCH3で現わされる比較的単純な物質です。正式な化学名称はN-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミドです。

2.アセトアミノフェンの作用機序

アセトアミノフェンは、風邪薬の成分として繁用されています。自宅に風邪薬があれば成分表を確認してください。成分として真っ先にアセトアミノフェンが表示されているはずです。

アセトアミノフェンの基本的な用途は、鎮痛剤です。

  • 頭痛
  • 歯痛
  • 生理痛
  • 腰痛
  • 筋肉痛
  • 神経痛

などに効くとされています。
アセトアミノフェンの具体的な作用機序は、

  • 中枢神経系に働きかけて痛みをまひさせる
  • または毛細血管を拡張させ熱を下げる

と考えられています。ただし詳しいメカニズムは未解明です。

アセトアミノフェンは、市販の頭痛薬に含まれるアスピリンやイブプロフェンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のように、消化器系の副作用のない点がメリットです。またモルヒネなどとも違って依存性や眠気も起きにくいとされています。これが広く使われる理由です。

3.アセトアミノフェンの副作用

アセトアミノフェンの重篤な副作用の事例は報告されていませんが、広範囲に利用されるため、何が原因となるかわからないこともあります。一番心配されているのは肝臓障害の恐れがある点です。

アセトアミノフェンのメリットは、効果が現れるまでの時間が短い点です。これは肝臓が機能的に働いているからです。しかし、もともと肝臓に持病があったりアルコール類をよく飲む人であったりすれば、急性肝不全に陥るリスクがあるようです。

そのため、ないと思いたいですが、お酒で風邪薬を飲んではいけません。また飲酒後に飲むのも危険です。寝酒は睡眠を妨げるリスクもあるので、風邪をひいた日は禁酒しましょう。かつてお酒と風邪薬を使った殺人事件が起きています。

4.アセトアミノフェンの製造工程

アセトアミノフェンの製造工程は、やや複雑です。それなりの技術と施設が必要です。だからこそ1社によってほぼ独占的になってしまったのでしょう。

まずベンゼン環にヒドロキシ基が付いたフェノールを硝酸ナトリウムによってニトロ化します。
できたニトロフェノールは水酸化ホウ素ナトリウムを使って還元します。
得られた4-アミノフェノールは無水酢酸を使ってアセチル化します。
そうしてアセトアミノフェンが完成します。

ちなみに工業品としてはニトロベンゼンから作られることもあるようです。

5.アセトアミノフェンが使われている薬

今回の事件とは直接関係ありませんが、とりあえずアセトアミノフェンが使われている市販薬を列挙します。詳細は薬剤師に尋ねましょう。処方薬に関しては、かかりつけのお医者さんと相談してください。

  • アクラス(ノーシン)
  • 宇津救命丸(宇津ジュニアかぜ薬)
  • エスエス製薬(エスタック総合感冒)
  • 改源(改源錠)
  • 小林製薬(ハッキリエース)
  • 佐藤製薬(ストナプラス)
  • シオノギヘルスケア(セデス)
  • ジョンソンエンドジョンソン(タイレノール)
  • 全薬工業(セミドン、新ジキニン)
  • 第一三共(ルル、ペラック、サリドンエース、プレコール)
  • 大正製薬(パブロン、ナロン)
  • 武田コンシューマーヘルスケア(グラレンエース、ベンザブロック、ベンザエース)
  • 中外医薬生産(ユリアン、ビタトレール)
  • ノーエチ薬品(ポジナール)
  • ホーユー(スズレックス)
  • ライオン(バファリンルナ、小児用バファリン、バファリンプレミアム)

今売られている薬が危ないわけではありません。慌てず冷静になりましょう。廃棄したり業者を訴えたりしてはいけません。厚生労働省からの通知を待ちましょう。

アセトアミノフェンのACE処方とは

アセトアミノフェンの使い方にはACE処方という方法があります。なおACEとは、

  • アセトアミノフェン(A)
  • カフェイン(C)
  • エテンザミド(E)

の頭文字を取ったものです。これら3種類を混ぜて服用することにより鎮痛解熱効果を高めます。

アセトアミノフェンについては上述の通りであり、飲んでも胃を荒らさないメリットがあります。またカフェインには興奮作用、頭痛を和らげる働きがあります。一方でエテンザミドは鎮痛効果が知られています。具体的には体温調節中枢に作用します。また痛覚中枢の興奮を抑えることで鎮痛効果をもたらします。

中国産アセトアミノフェン混入の心配はないのでしょうか

化学物質は、だれが作っても同じであるはずです。そのため安価な中国産だからといって、すぐに問題となるわけではありません。ただし中国産が信用できるか?そうした問題もあります。つまり本当にアセトアミノフェンだったのでしょうか。

記事執筆時点において何らかの副作用などは報告されていません。知らぬが仏でいた方が良いのか?薬を飲む際に、どこまで注意すべきなのか?考えだしたらきりはありませんが、薬に関しては知っておいて損はありません。

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