
神奈川県の中学校で明らかになった食べ残し問題から始まって、異物混入?福岡県でも発生しています。
探していけば、もっと多くの場所で起きているでしょう。
冷たい給食は美味しくないかもしれませんが、食べ残す本当の理由は何でしょうか。
給食の歴史と現状を概観し、
- 給食の役割
- 問題点
- 功罪
- 望ましい在り方
を考えてみましょう。
目次
給食の歴史
第二次世界大戦後から始まった
明治期に行われていた記録もありますが、それは一部の学校にすぎませんでした。もちろん戦争が始まると食料不足になり、中止に追い込まれています。
諸説ありますが、占領してきたアメリカ人が子供たちの現状を見て、食糧援助したことが始まりと考えられています。
そのためアメリカの余剰物資?最初は脱脂粉乳だけ、後にパンが加わりました。
日本食とはまったく違うメニューです。
昔、給食を残すのは論外だった!
私が小学生だった1970年代の給食は、ほぼ食パンが主食でした。
ゴハンの日が月に1回程度、ソフト麺は食べたことがありません。揚げパンも2週間に1度程度でしょうか?
当時は食べ残す?論外です。食べきるまで片付けてはいけない!
今思えば拷問に値するのかもしれませんが、
- 食べ物を大切にする!
- 栄養バランスが考慮されているので、残してはいけない!
そうした風潮があったのも事実です。
最近は中学校でも給食を実施する学校が増えています。
脱脂粉乳に対する不平はあったでしょうが、かつては食べられるだけで幸せでした。
しかしぜいたくになると、冷たい!不味い!異物?食べ残しが当たり前になりました。
給食のシステム
現在実施されている学校給食は、3つの方法に集約されます。
1.自校式
メリット
学校内で作っているため、温かい食べ物を提供できます。
また給食の調理員や栄養士さんが常駐するため、子供たちの意見を聞きやすいメリットがあります。
デメリット
とはいえ、設備を作るのに大変な資金が必要です。調理員を雇う人件費もあります。
そのため一定数の子供がいないと、赤字を生み続けることになります。
もちろんお金の問題ではないのかもしれませんが、お金がないと作れません。
※ふりかけもジャムもゼリーも手作り!自校式・兵庫県宝塚市の給食のヒミツ
2.センター式
メリット
規模の経済によって、多くの学校分を作るほど単位当たり経費が安くなるメリットがあります。
デメリット
もちろん配送までに時間がかかるので、冷えてしまうデメリットがあります。
途中で異物混入?食中毒のリスクも生まれます。
配送費用も考えれば、一定のエリアに制限されてしまいます。
3.委託式
メリット
もちろん仕出し屋などプロが作るので、安全面は問題ないはずです。費用も安くなります。
デメリット
配送時間がかかれば、冷えてしまうでしょう。
とはいえお弁当と考えれば、冷えているのが当たり前?
しかし温かいという給食の原点に立てば、論外な方法かもしれません。
コストが下がれば質も下がる?可能性は否めません。
給食の役割
学校給食は時代に逆行していないのか?そんな気もしますが、
逆に給食を始める学校が増えていたり、ニーズが高まっているようです。その理由は何でしょうか。
1.栄養補給
時代は変わっていますが、それでも栄養補給の意義を忘れてはいけないでしょう。
特に義務教育です。日本は豊かになったとは言いますが、それでも家庭で十分な食事をしていない子供たちもいます。
いわゆる貧困児童の問題です。
また子供たちにとって1回の食事に該当します。中年がダイエットのために一食抜く?そうした次元とは違います。
もちろん肥満体型の子供もいますが、成長期に当たるため、栄養バランスのとれた食事をすることは不可欠の要素です。
2.みんなで同じものを食べる
家庭内でも個食化が進んでいる現状において、みんなが同じものを食べる学校給食に意味はあるのでしょうか?
古い精神論ではありませんが、同じ釜の飯を食う?
もちろん給食が嫌な人もいます。好き嫌いもあります。小食の子もいるでしょう。
とはいえ大人になったとき、共通の話題で盛り上がれます。豊かになった子供たちであっても、食べ物の思い出は残るようです。
3.経済格差の解消
上述の栄養補給と関係しますが、経済格差の解消という意味もあります。
各自がお弁当を持参するようになると、やはり差が見えてしまいます。
平成の世であっても、逆に平成の世だからこそ、食べられない子もいるでしょう。
もちろん他国に比べれば小さい格差ですが、クラスの友達同士で、これほどまでの差が生まれることは悲しい現状です。
昔のマンガではありませんが、給食を食べるために学校へ行く!そうした話は今でもあります。
4.親の負担を減らす
最近ではこの点が大きいようです。
つまり共働きが増えています。お母さんがお弁当を作る?そうした時代ではありません。
一方でキャラ弁に凝る親もいます。するとこちらも格差が見えてしまうでしょう。
変な競争心や心労をなくす意味でも、給食を提供することは重要なようです。
5.食育
こちらも重要です。
貧困家庭がある一方で、日本の食品廃棄量は極めて異常な事態です。
さまざまな計算方法はありますが、国民1人が、毎日ゴハン1杯を捨てている計算になるようです。
これが食育です。
食べ方も指導できます。つまり、主食とおかずを交互に食べるなどのことです。
最近は地産地消に取り組む自治体も増えています。
つまり、地域の特産物を給食のメニューに使います。
そうして地元を愛する!生産者の顔が見えれば、食品ロスの軽減にもつながります。
給食の問題点
一方で給食にはいくつかの問題点があります。
問題のない事業はありえませんが、少しでも解消していく努力は不可欠です。
1.集団食中毒
みんなで同じものを食べることによる第一の弊害は、万が一食中毒が起きた時です。
特にセンター式や委託式で提供している場合、大元で何らかのトラブルがあれば被害が甚大です。
一方で原因特定も難しくなります。
直接的な健康被害がない場合でも、今回起きたような異物混入で、何かが給食に紛れてしまえば、多くの子供たちに迷惑がかかります。
2.中学男子では量が足りるのか
同じものを同じ量だけ食べる。中学男子では足りるのでしょうか?特に運動をしている子供なら、足りないはずです。
私事で恐縮ですが、私の中学時代は弁当でした。そして弁当箱を2つ持っていきました。
ひとつはゴハンだけ、ひとつはおかずだけ!それでも部活が始まる頃にはお腹が空いてきました。
もちろん逆もあるでしょう。小食の子なら、食べきれないかもしれません。
どうしても食べられない物もあるでしょう。
3.給食費を払わない家庭がある
最近は報道もされませんが、給食費不払い問題もあります。
そもそも給食費は誰が負担すべきなのか?給食を義務化するのであれば、国が責任を持つべきなのでしょう。
とはいえ食事と考えれば、家庭の問題でもあります。
意図的に給食費を払わない家庭があるようです。
だからといって子供に食べさせないわけにはいきません。
中には本当に払えない家庭もあるでしょう。ならば給食の趣旨を考えれば、国が面倒をみるべきなのかもしれません。
4.アレルギー問題
最近面倒なのはアレルギー問題です。実際に死亡した児童もいます。
だから先生も、給食を残す子供に無理強いはできません。
とはいえ昔はなかった問題です。今の子供たちは何が違うのでしょうか?
もちろん単なる好き嫌いならばぜいたく言うな!と一喝できますが、一歩間違えば命にかかわります。
極めて深刻な話です。
なお今後考えるべきは宗教問題です。たとえばイスラム教の子供がいたら?ハラル食品!第一に豚肉は厳禁です。
さらには、調理施設を別にしなければなりません。
そうすると費用が莫大になります。
5.大量の食べ残し
今回起きたトラブルの発端は、大量廃棄問題でした。
もちろん異物が混入していれば、それは論外です。髪の毛や虫が入っていれば、食欲が失われます。
とはいえ、街中の食堂でもありがちなことです。
また食育にもつながります。
もったいないと思わないか?好き嫌いを放置してもよいのか?
各家庭で考えることかもしれませんが、国際化を叫ぶのであれば、世界には食べられない人たちも多いです。
英語教育より先にやる話です。
味の好みもあるでしょう。
美味しくない?とはいえ結婚して家庭を築けば、食の違いに驚くことがあります。
そうしたことの予行練習だと思えば、ガマンして食べることも大切です。
給食は必要なのか
平成も終わろうとしている今、給食は必要なのでしょうか?
子供に対して平等な機会を与えるという観点で言えば、極めて重要なシステムです。
とはいえ誰もが納得する給食は、ありえないでしょう。
今後もトラブルが生じ、模索が続きます。
もちろん異物混入や食中毒、アレルギーなどは論外です。
嫌いな物も、調理法ひとつで好きになるかもしれません。友達と一緒に食べればおいしいですよ。