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2018年2月14日、文部科学省は、2022年度の入学生から適用される高校の学習指導要領改訂案を公表しました。

具体的な対象者は、2018年4月に小学6年生となる子供たちからです。

学習指導要領は、時代にあわせて、おおよそ10年に1回の割合で改訂を続けています。

「ゆとり教育」が社会問題となり、その反省でしょうか、現在使われている学習指導要領では、教える量や時間が増えて教科書も従来より厚くなりました。

では次の改訂で、2022年度の高校の学習指導要領はどのように改訂されるのでしょうか。教科別に具体的な特徴をまとめてみましょう。

学習指導要領とは

学習指導要領とは、小学校、中学校、高校で教える学習内容の基準を定めたものです。

教科書は、これを元にして作られます。

学習指導要領にしたがって教える

公立、私立を問わず、学校教育法で認められた学校と呼ばれる教育機関で教える際には、この学習指導要領にしたがわなければいけません。

当該学年の子供にとって最低限理解しておくべきとされるレベルを示しているからです。

学習指導要領の基準以上を教えても罰則はなし

ただし、学習指導要領で定めてある基準以上のことを教えても、罰則規定はありません。

そのため私立学校では、大学受験対策としてオリジナルのテキストを使い、より深い内容を学ぶことも多いです。

実際に1998年に改訂され2002年から始まった、いわゆる「ゆとり教育」の時代も、一部の私立学校では、それ以前の内容、つまり詰込み教育時代と同じようなレベルで指導をしていました。

そのため公立か私立か、出身学校の違いで大きな学力格差が出てしまったのも否めない事実です。

なお学習指導要領については、下記でも説明しています。参考にしてください。

参考「意見募集中!学習指導要領の改訂案を見る7つのポイント

教科別にみた2022年度改訂案の特徴

2022年度から順次使われる学習指導要領改訂案の具体的な特徴を教科別にまとめます。

1.国語は内容が実用的かつ具体的になる

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の国語は、科目名が大きく変わります。

これまであった

  • 国語総合
  • 現代文A
  • 現代文B
  • 古典A
  • 古典B

などがなくなります。

その代わりに、

  • 現代の国語
  • 言語文化
  • 論理国語
  • 文学国語
  • 古典探究

などが新設されます。

実用的な文章の読み書きを学ぶ

注目すべきポイントは、現代の国語で実用的な文章の読み書きを学ぶことです。

これは2020年度から始まる大学入学共通テストで記述式問題が出題されると言われているからです。

大学受験向けに作られた科目とみなされています。

伝統文化や日本語を正しく理解する

また日本の伝統文化や日本語を正しく理解するために、言語文化文学国語などを設け、より具体的な学習をしていくと考えられています。

2.数学はCが復活する

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の数学は、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・Bの他に、前回の改訂でなくなっていたCが復活します。

これにあわせて、数学では各科目の中身も一部入れ替わります。

私立高校などの進学校では前倒しされることもありますが、基本的には、

  • 高校一年生で数学Ⅰと数学A
  • 高校二年生で数学Ⅱと数学B
  • 高校三年生で数学Ⅲと数学C

を学びます。

一部内容を数学Cへ移行

復活した数学Cには、これまで数学Bで学んでいたベクトル、数学Ⅲで学んでいた複素数平面などが移行します。

言い換えるなら、前回の改訂では、各科目に詰め込み過ぎていたのかもしれません。

授業で教えていても、ペースを速めないと終わらなかったのも事実です。

3.理科に大きな変更はなし

理数を新設

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の理科は、大きな変更はありません。

ただし後述するように新たな教科「理数」が新設されます。それによって、これまであった理科課題研究が廃止されます。

生物は遺伝や進化中心

また生物は、遺伝や進化を中心に学びます。

しかし「覚える項目が多すぎる」との指摘があり、生物の分野では、重要用語を500~600語程度に絞ります。

参考「遺伝用語の「優性」「劣性」は「顕性」「潜性」に変更されます

4.社会は歴史総合と公共が必修になる

そもそも高校に社会という教科はなく、今は地理歴史と公民が正式教科です。

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の地理歴史・公民は大きく変わります。

(1)地理歴史は近現代史が詳しくなります

地理歴史はこれまで、

  • 世界史A
  • 世界史B
  • 日本史A
  • 日本史B
  • 地理A
  • 地理B

に分かれていました。

これが

  • 歴史総合
  • 世界史探究
  • 日本史探究
  • 地理総合
  • 地理探究

に変わります。

総合は基礎・探求は応用

それぞれ、総合は基礎的内容、探究は応用的な意味合いがあります。

 

歴史総合が必修科目になり、これまで避けがちだった近現代史を中心に学びます。

国際化が進む中、諸外国との認識に違いが出ると困るからです。

ただし政治的に偏った内容になりがちなテーマなので、先生の指導法が問われそうです。

参考「太平洋戦争や日中戦争の話を後世へどう伝えるべきか

ちなみにAは、大学受験を目的としない、高卒者に求められる教養的な科目でした。

一方でBは、大学受験を目的とした科目です。そのため教科書の厚さが違います。

日本史と世界史を融合
また歴史総合において、日本史と世界史を融合した授業が期待されています。

ただし、2つをただいっしょにした学習ではありません。

一方からの視点ではなく、生徒たちで考えて世界と日本とのかかわりを学び、あらゆる角度の視点を身につけることが狙いです。

(2)公民は公共が必修になります

18歳から選挙権が得られるようになりました。これにあわせて公民も変わります。

これまでの教科は、現代社会、倫理・政治・経済であり、3つのうちどれかを選ぶ選択必修制でした。

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の現代社会が公共に変わり、これが必修科目になります。

公共では、高校生であっても集団の中の一員であることを自覚し、政治へ積極的に参加することを念頭に置きます。

また少子高齢化、安全保障、グローバル化などの視点を取り入れます。さらに、これも避けがちだった領土問題についても詳しく学びます。

参考「参議院選の結果から見て主権者教育は成功したのか

5.外国語は文法中心からの脱却を図る

意外ですが、英語という教科はありません。あくまでも外国語です。

そのため英語以外の言葉を教えても問題ありません。ただし、英語コミュニケーションⅠは必修です。

大学入試でも英語は、

  • 読む
  • 書く
  • 聞く
  • 話す

この4つが求められるようになります。

そのため2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の英語は、コミュニケーション重視の学習内容に変わります。

実際の授業ではディベートやプレゼンテーションなども取り入れられる予定です。

参考「2020年から始まる大学入学共通テストの英語を民間に委託して大丈夫か

特に、文法中心の学習からの脱却を図り、高校で新たに追加する単語数は2500語以下に止めます。

とはいえ、2022年度から入学する高校生なら小学校から英語は始まっているので、大学入試までには、覚えるべきとされる単語数は5000語程度になります。

6.家庭は時代を反映した内容へ

 

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の家庭科は、生活とデザインという科目が無くなり、従来からある家庭基礎と家庭総合に集中します。

学ぶ内容は、時代にあわせて、少子高齢化に応じた地域社会とのつながり、寿命が延びるにともなう生活設計などについても考えます。

一方で和食や和服など、日本の伝統文化についても学びます。

7.情報はビッグデータやクラウドまで広げたい

2020年度から小学校でプログラミング授業が必修化します。社会に出ればパソコン操作は当たり前になります。そういう意味では、具体的な学習が求められます。

参考「プログラミングが必修化?家庭でやっておきたい5つのこと

これまでは、

  • 社会と情報
  • 情報の科学

など漠然とした科目名でした。

2022年度の学習指導要領の改訂案で高校の情報は、情報Ⅰ、情報Ⅱに変わります。

情報Ⅰ

情報Ⅰにおいて、

  • プログラミング
  • インターネットの使い方
  • セキュリティ問題

など、情報化社会で生きるための基礎を学びます。

情報Ⅱ

情報Ⅱでは、クラウドやビッグデータの活用などまで踏み込んでいく予定です。

とはいえ、それをそんなに深く教えられる先生がいるのか、こちらが課題になりそうです。

参考「ビッグデータ解析で何ができる?何に気を付けるべきか

8.「理数」が新設される

2022年度の学習指導要領の改訂案で、高校の教科に新しく理数という教科が新設されます。

ただし、必修ではありません。

科目は、理数探究基礎と理数探究に分かれます。文字通り、前者が基礎、後者が応用という意味合いです。

将来的に大学入試でも理科と数学を融合した問題が出されます。

そもそも理科と数学は切り離せません。「自然現象はすべて数式で説明できる」と言われるように、数学は科学界における世界共通言語だからです。

自然や科学について多角的な視点からとらえ、情報整理力を高めることで、論理的な課題解決能力の向上、結果的に科学的関心を持たせることも期待されています。

9.芸術や保健体育は変わらず

芸術、つまり

  • 音楽
  • 美術
  • 工芸
  • 書道

に大きな変更点はありません。

保健体育も大きな変化はありません。ただし安全面から、水泳の飛び込みスタートは、高校一年生で原則禁止になります。

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授業の双方向化も期待されています

学習指導要領は、社会で生きていくために最低限理解しておくべき内容を示した基準です。

もちろん知識は必要ですが、その知識をどのように活用していくか、応用力こそ求められています。

2022年度の学習指導要領の改訂案では、高校のすべての教科において、アクティブ・ラーニングを取り入れた双方向的な展開も目指しています。

先生が教えるという一方的な授業だけではなく、生徒が積極的に参加することで、授業がより活発化することも期待されています。
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