
人類最大の敵は何か?ライオンでしょうか?ハチも脅威ですね。とはいえ年間70万人以上もの命を奪っている生き物がいます。
もちろん蚊が直接人を殺すわけではありません。媒介する病原体が問題です。
蚊は夏のイメージですが、最近は温暖化の影響もあるのでしょうか、冬でも油断がなりません。我が家でも、年明け早々数匹と遭遇しました。観葉植物などに水が溜まっていれば注意しましょう。
目次
蚊とはどんな生き物か
とはいえチョウやバッタなどとは異なり、使える羽は2枚しかありません。これは双翅目の特徴です。後ろ羽は退化して痕跡程度になっています。同じ双翅目の仲間にはハエやアブがいます。
基本的な生態は、卵→幼虫→さなぎ→成虫の過程を経る完全変態です。幼虫とさなぎの期間は水中ですごします。ただし呼吸のために身体の一部を水面に出して生活します。
そのためオスは吸血しません。また交尾前のメスも人間には興味を示しません。実に不思議です。我が子のためにスイッチがはいるのでしょう。
主な種類は
1.イエカ
刺されると痒みは残りますが、特に問題はありません。ただし夜行性なので、安眠を妨害する困った種です。またアレルギー体質の人は、赤く腫れることもあります。
2.ヤブカ
ちょっと気を付けたいのはヒトスジシマカです。こちらは病気を媒介する可能性があります。2014年に流行ったデング熱の原因と考えられています。特に早朝や夕方が活動時間帯です。
3.ハマダラカ
日本には南西諸島の一部を除き生息していないと言われています。とはいえ飛行機や船に乗って入国するリスクは否定できません。もちろん熱帯圏を旅行する場合には注意しましょう。多くの病原体を保有する人間の天敵です。
最大の敵と言われる理由は
ちっぽけな存在ではありますが、人間にとっては最大の天敵です。そう言われる理由は何があるのでしょうか。小さいといえども侮ってはいけません。蚊は相当の努力をしています。
1.病原体の塊
日本人にとって蚊は夏の風物詩でもあります。中高年であれば蚊取り線香の匂いは郷愁を感じさせます。もちろんエアコン完備で密封された現代家屋では、蚊の入る隙もないでしょう。ちなみに3階以上になると蚊が飛んで上がれないとも言われています。
日本で普通に生活している限りにおいて、蚊に刺されても心配することはありません。痒くて不快ではありますが、慣れれば何とかなるものです。
例えば2014年はデング熱、2016年はジカ熱、次は2018年でしょうか?しかし熱帯地域で最も恐れられているのはマラリアです。
それでも過度に恐れる必要はありません。ある調査によれば、蚊全体の1割ほどしか病原体を保有していないとか。すなわち蚊であっても病原体を体内に有していれば、何らかのリスクがあると考えられるからです。蚊にとっても命がけなのです。
2.驚異の繁殖力
虫のイメージとして、わんさか湧いてくる!驚異の繁殖力があります。特に夏は大変です。数日管理を怠ると、庭に植えていた野菜たちが全滅することもあります。蚊も同じです。ちょっとした水溜りがあれば、一気に増えます。
一方、上述したように日本の家屋は密閉されています。室内は温かいですね。冬でもゴキブリが活動できるくらいです。観葉植物の受け皿や葉の根元などに水が溜まっていませんか?そうした隙に卵を産みつけられたら大変です。
3.素早く遠くまで飛ぶ技術
蚊を一撃できますか?ふわりふわりとか弱そうで、しかし一撃離脱の技は見事です。酔拳のように逃げ足が速いですね。そうした飛翔力も長く生き延びてきた理由と考えられています。カブトムシのように簡単に捕まってしまえば、一網打尽です。
住宅街で1キロと言えば、結構な範囲です。それでどんどん卵を産み付けていけば、あっと言う間に汚染地域が広がります。夏に感染症のニュースが流れたら、遠くの公園であっても注意しましょう。
4.好感度センサーの持ち主です
もともと蚊は、人間を相手にしていませんでした。森林の奥地で、野生の哺乳類やカエルなどの血を吸って生きていたようです。とはいえある時から人間の味を覚えた?人間の血は栄養があります。卵を産むには最適だったのでしょう。そこから人間を追い求める旅が始まります。
ではどうやって人間を認知するのでしょうか。蚊には好感度センサーがたくさんあると言われていますが、
空気中には0.04%しかありませんが、人間の呼気には約4%の二酸化炭素が含まれています。単純計算で100倍の濃度です。これなら直ぐばれてしまうのもうなずけます。
ただし二酸化炭素だけであれば、他の生物も呼吸をしています。
人間の体温は36度前後です。一方で鳥類は40度前後あります。ブタも人間より高いです。そうした微妙な熱の違いを感知する能力があります。
具体的にどの物質であるかは特定されていませんが、汗の匂いに惹きつけられるとの研究があります。逆に汗をかかない人には蚊が近寄らない?そんな報告もあるようです。制汗剤は防虫剤の代わりになるかも。
5.気づかれない技術
蚊に刺されている瞬間を見たことがありますか。多くの人は、刺された後、痒くなってはじめて実感するようです。そうした気づかれない技術は凄いと思いませんか。
蚊が皮膚に触れても、人間はほとんど感知できません。そして針を刺して吸血しているはずなのに、まったく自覚できません。言い換えるなら、痒みがなければ蚊に刺されても問題なさそうです。
こうした技術は、私たちの社会に役立っています。例えば痛くない注射器の開発に応用されています。特に一型糖尿病の患者さんがインスリン注射する際に重宝されています。
また血液は空気に触れると固まりますが、吸血中に血が固まると困ります。注射針が詰まってしまうからです。そのため蚊は、特殊な薬剤を注入します。すなわちこの物質を特定し量産できれば、脳梗塞などの治療薬に使えると考えられています。
野生の生き物から私たちは学ぶべきことが多くありそうです。
蚊を絶滅させるべきなのか
これまでも蚊の撲滅を目指した計画が様々行われてきました。とはいえ種の撲滅は人間のエゴではないのか?賛否があるのも事実です。天敵がいなくなったら、人間はもっと自然に対して横暴になるかもしれません。
蚊こそ被害者でしょう。クマやシカによる農産物の被害と同じことです。蚊も本来は、人間には近寄りたくないかもしれません。
森のクマさんが、ゴミの味を覚えて里に来るのと同じです。