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毎年10月第一週は、ノーベル賞の発表があります。ここ3年続けて日本人の受賞がありました。

今年も期待されましたが、すべて外国人でした。とはいえ一部の研究には日本人も関わっています。

いずれも細かくみれば難しい研究ですが、2017年の生理学・医学賞、物理学賞、そして化学賞に関する内容を、できるだけ簡単に解説してみましょう。

2017年の内容

2017年の内容は、昨年に比べると原理的には優しい研究です。たぶん概略的には理解できるはずです。

参考「2016年ノーベル賞の内容をやさしく解説します

1.生理学・医学賞

(1)受賞テーマと概要

受賞したテーマは「体内時計を制御する分子メカニズムの発見」です。

私たちの体は1日を無意識に24時間と認識しているようです。

もちろん太陽の動きを見て生活していれば、それは当たり前でしょう。つまり昔から人間は、日の出とともに起き、日の入りと共に眠りに就いたからです。

かつてある研究が行われました。つまり窓がなく時計もない、外部と遮断された部屋に人を閉じ込めると、人間は24時間の周期で生活できるのだろうか?

実際には25時間周期だったようです。つまり少しずつ朝が遅くなる計算です。

これは、早起きがつらい原因と考えられていました。とはいえ、人間はほぼ24時間周期を感知していることが証明されたのです。

ではどうやって認識しているのでしょうか?

それは各細胞がそれぞれ時計を持っているのです。それを体内時計、概日(がいじつ)リズムと呼んでいます。

このような仕組みは、微生物にもあると考えられています。

(2)具体的な研究内容

今回は人間に対する研究ではなく、キイロショウジョウバエを使いました。基礎研究です。ショウジョウバエは昔から遺伝の研究に利用されています。

たとえば、ある遺伝子が働かない個体は概日リズムが乱れていました。その遺伝子を治してあげるとリズムが戻りました。

では、遺伝子は何をしているのでしょうか?

具体的には、その遺伝子は夜間に特定のタンパク質を作り、昼間はそれを壊していたようです。その行為自体に何の意味があるかはわかりませんが、それによってリズムを刻むことができます。

わかりやすく言えば「正」の字を書くのに1秒かかるとすれば、それを60個書けば1分になる。そうした目安を作っています。もちろん個人差がありますね。時間認識の違いは、人によって微妙に異なるものです。

このようなリズムを遺伝子レベルで解明したことに意義がありました。

(3)何に役立つのか

体内時計が乱れて一番困ることは、時差ボケかもしれません。

仕事の出張を含めた海外旅行が当たり前になりました。昼間に飛んで昼間に着く?逆もあります。眠れなくなったりもします。

時差ボケの解明かつ、解消に役立つかもしれません。

一方で睡眠障害に対する薬の開発も期待されています。

眠れない理由は何か?関係する遺伝子を修復したり、リズムを取り戻す医薬品の開発が考えられているようです。

ちなみに2017年は「ゲノム編集」が受賞するのではと注目されていました。

とはいえ、基礎研究に焦点を当てたという意味でノーベル賞は方向性を元に戻したのか?と密かにささやかれています。

2.物理学賞

(1)受賞テーマと概要

受賞テーマ

受賞したテーマは「LIGO(ライゴ)検出器および重力波の観測への決定的な貢献」です。

昨年も期待されていましたが惜しくも受賞を逃しました。そういう意味で今年のド本命でした。物理関係者であれば、文句の付け所がありません。

ちなみにLIGOとは、重力波を観測したアメリカの施設です。

重力波とは、アインシュタインが1915年に予言した「残された宿題」のひとつです。

理論的には解明されていましたが、観測機器の精度という点から、観測は難しいだろうと言われていました。

参考「アインシュタインの予言が的中?重力波を捉えたぞ!

概要

重力があると空間が歪みます。

物体の質量が大きいほど重力が強くなります。

その物体が動けば、空間の歪みが波として宇宙空間を伝わるはずだ!アインシュタインは考えました。これが重力波です。

その重力波を1回のみならず既に4回観測しています。これはもう事実として受け止めるべきでしょう。

(2)具体的な研究内容

LIGO(ライゴ)とは

LIGOは、Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatoryの略です。レーザー干渉計重力波研究所と訳されています。

アメリカのワシントン州とルイジアナ州に、長さ4キロメートルにわたる施設があります。

重力波の観測方法
具体的には、異なる2方向にある鏡に向かってレーザーを照射します。もし何事もなければ、2方向から同じ時間で光が返ってくるはずです。
しかし、もし空間が歪んでいたら、微妙に戻ってくる時間が違うはずです。

たとえば大規模なブラックホールが衝突すると、重力波が起きると考えられています。それを地道に観測します。

参考「重力波を再観測!ブラックホールの合体は頻繁に起きるようです

ただし、とても小さな変化です。100億分の1のさらに100億分の1メートル程度のサイズだからです。それを観測したのです。まさに技術の勝利とも言えます。

ちなみに日本でも重力波を観測する施設を建設中です。

2015年に物理学賞を受賞した梶田隆章さんが所長を務める、東京大学宇宙線研究所が岐阜県の神岡鉱山に作っているKAGRA(かぐら)です。

2018年度に運用開始の予定ですが、それが稼働すると、重力波天文学がさらに進むでしょう。

(3)何に役立つのか

今回の研究が私たちの生活に直接関係することはありません。ひとつの科学的関心という程度に止まるでしょう。

とはいえ、宇宙の解明に役立ちます。そしてなぜ生命が誕生したのか?その謎にも迫れるでしょう。

これまで天文学は電波を利用していました。わかりやすいのが夜空の星を観測する、つまり可視光線です。それから赤外線や紫外線、X線などを利用していました。もちろん限界があります。

昨今指摘されるのは、宇宙空間にはダークマターと呼ばれる、質量はあるけど未知なる物質の存在です。しかし、ダークマターは電波を使った観測では見つけることができません。

参考「次なる宇宙の課題はダークマターを探すことです

しかし電波以外、重力という新しいツールを使って宇宙を観測することができました。観測技術が増えたのです。

重力波天文学という新たな分野が拓かれます。

3.化学賞

(1)受賞テーマと概要

受賞したテーマは「クライオ電子顕微鏡法の開発」です。ちょっと抽象的すぎますね。

具体的には、タンパク質の構造を低温(クライオ)状態で観察できる電子顕微鏡技術を開発したのです。

タンパク質の構造解析という意味では生理学・医学賞に近いですが、今回は観察技術という点で化学賞になったようです。

生化学を新しい時代に導いたことが高く評価されています。

従来の電子顕微鏡では、タンパク質を結晶化、固定する必要がありました。きれいに並べないと観測できなかったのです。

今回の開発でその手間を省いた!それだけでも凄いことなのです。

(2)具体的な研究内容

クライオとは、低温という意味です。cryologyは氷雪学、cryometerは低温度計です。

つまりクライオ電子顕微鏡法とは、検体であるタンパク質を極めて低い温度にすることで分子構造などをわかりやすくする観測技術です。

電子顕微鏡の難点は、真空にする、また光を当てると熱が生まれることです。

空気がなく、かつ熱が当たると、微生物は死んでしまうし、タンパク質は壊れます。

結果として断片的な判断しかできず、本当の働きがわかりませんでした。

しかし低温で観測する、簡単に言うと、検体を氷に閉じ込めます。すると瞬間冷凍なので、ほぼ生きた状態で検体を観察することができます。

これは画期的なことです。これによってジカ熱の原因ウイルスを可視化できたと言われています。

なおクライオ電子顕微鏡と言う装置はありません。あくまでも観測方法です。

(3)何に役立つのか

こちらも基礎研究です。

顕微鏡の開発自体はどんどん進むべきでしょう。つまり現状のレベルでは、原子を観測することができないからです。

こうした技術を応用して、さらにミクロの世界、原子核、素粒子を直接観察できる機器の開発が期待されます。

生化学の分野では、タンパク質がよりリアルに観察できます。

そういう意味では生化学の基礎研究、そして医学分野の研究に貢献すると期待されています。生物の活動は、タンパク質がカギになるからです。

また同電顕の活用によって細菌やウイルスの表面構造が明らかになりました。そこから感染、病気発症の仕組みが解明できます。新薬の開発にも弾みがつくでしょう。

日本人の受賞ならず

1.日本人も関係しています

ノーベル賞の授賞者は、1テーマ3人までと決まっています。

そして故人には資格がありません。

そうした理由をあわせて考えれば、今回の結果に失望する必要はありません。

重力波の観測などは日本人研究者も大きく関係しています。

2.日本の未来は大丈夫なのか

過去の受賞者を含めて多くの著名科学者が日本の将来について危惧しています。

つまり若手研究者が減っているからです。

もちろん少子化もありますが、そもそも研究職に就こうとする若者が少ないようです。

大きな理由は、大学教員を含めて仕事として働くポストがありません。

また基礎研究に企業や国がお金を払わなくなりました。

すぐに成果を求めます。これでは日本の科学は衰退する一方です。

たまたま今年は受賞できなかった?で済めばよいのですが。来年に期待しましょう。

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蛇足:文学賞・平和賞・経済学賞は必要なのか

ダイナマイトの発明によって莫大な富を得たアルフレッド・ノーベル氏の遺志によって作られたのがノーベル賞です。

目的は「人類に貢献した人へ遺産を分配する」ことです。

彼の遺志を今から聞き直すことはできませんが、文学賞、平和賞、経済学賞は必要なのでしょうか。

もちろん経済学賞は、本当の意味でノーベル賞ではありません。

そもそも文学をどうやって評価するのか?2016年は歌詞が受賞しました。賛否両論あるのは事実です。

チャレンジ精神に拍手を送るべきなのでしょうか。

また平和賞は政治に利用されています。

今ミャンマーで起きているロヒンギャ難民のことを考えれば、スー・チー女史に与えたことは正しかったのか?ロヒンギャ問題は30年以上も続いています。それがまったく解決されていません。

こうした賞を続けていくべきなのか?ノーベルさんに聞いてみたいですね。

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