
冬の大敵は、寒さや乾燥肌だけではありません。
静電気です。
ドアノブに触れた瞬間にバチっと来ますね。痛いですし怖いです。トラウマになりそうです。
ならば静電気とは何でしょうか?なぜ起きるのでしょうか?
静電気の原理を知れば、具体的な静電気の除去法や避け方、根本的に静電気をためない方法がわかります。
ちょっと注意するだけで、今年の冬は快適に過ごせますよ。
目次
静電気の除去法
静電気をためてしまったら、ドアノブに触るのが怖いですね。そんな時にできる簡単な静電気の除去法を覚えておきましょう。
1.壁ドンする
一般的な静電気は、ドアノブに指先が触れる瞬間に起こります。これは指先という細い部分に電気が集まるからです。
狭いところに大量の電気が集まるため威力が大きくなります。これは雷の原理と同じです。
ならば静電気の通り道を広げればよいのです。
具体的には、ドアノブに触る前に、手のひらをドアまたは壁にくっつけます。要領は「壁ドン」です。
木はゆっくりと電子を吸収してくれます。
金属の扉であっても、手のひらという広範囲で同時に触れるため、スムーズに流れ実質的に何も感じなくなります。
2.ぬれたタオルに触る
乾燥すると静電気が増えます。ならば手をぬらせば、静電気は起きないのか?夏は静電気が起きにくい理由もここにありそうです。
そのため、ぬれたタオルに触れましょう。その瞬間にたまった静電気がタオルへ流れてくれます。
大切なことは、細い指先ではなく、しっかりと握る、面積を広げることです。
もちろん水も電気を通します。そのためびしょびしょにぬれた手で触ると逆効果です。ぬれた手でコンセントに触ると、感電する可能性があります。
(補足)水は電気を通すのか
水は電気を通すのか?理科の実験などで使う純水(蒸留水)は電気を通しません。
とはいえ、日常生活で使う水道水には様々な物質が入っています。これらが電気を通します。具体的にはイオンが関係しています。
ぬれた手だと感電する?と言われるのは、以下の理由です。
皮膚の表面には微量ですが汗が流れています。そこには食塩(塩化ナトリウム)が含まれています。食塩水は電気をよく通します。これが原因になり「水で」感電するのです。
3.水道管を握る
地球はアースです。つまり、地球に静電気を逃がす方法があります。
どの家にもある地球とつながっているものは?水道管です。蛇口は金属製なので、電気を簡単に通します。
もちろん指先で触れる程度ではいけません。しっかりと蛇口部分のパイプを握りましょう。そうすると、うまく静電気が逃げてくれます。
びくびくすると失敗します。思い切って水道管を握りましょう。
静電気をためない方法
静電気の現象を起こさないためには、物質としての静電気をためないことが第一です。ちょっとした工夫で、ためない、逃がすことができます。
1.綿製品の衣服を着る
あとで説明する帯電列を参考にして、着る衣服を考えましょう。
基本は木綿製品です。これだとほぼ静電気はたまりません。
逆に異なる素材の衣服を着る、具体的にはポリエステル製シャツの上にウールのセーターを着ていれば最悪です。
ちょっと動くたびに静電気がどんどんたまっていきます。そして脱ぐ際に、バチっときます。
2.室内の湿度を上げる
乾燥すると静電気が起きやすくなります。そのため部屋の湿度を上げましょう。
最低でも40%以上、60%前後が理想です。
部屋の湿度を上げれば、インフルエンザなどの予防にもなり一石二鳥です。
オススメは、洗濯物を干しておくことです。こちらも暖房で乾くので一石二鳥でしょう。
ただし生乾きの臭いが嫌ならば、新しいタオルをぬらして干しましょう。臭いもなく驚くほど乾燥対策に効果的です。
3.畳の上をはだしで歩く
化学繊維やウールを利用したカーペット、そうした材質で作られている衣服や靴下を使っていると、歩いただけで静電気がたまります。こうした物を利用しないのが一番です。
冬なら現実的ではないですが、床を畳やフローリングにしてみましょう。できればはだしが一番です。
すると静電気が起きにくい反面、たまってもすぐに放出してくれます。
静電気とは何か
1.静電気は摩擦でたまった電子の集まり
下敷きで髪の毛を立たせる遊びをした人も多いでしょう。セーターを脱いだ時にバチバチします。衣服がまとわりつくこともありますね。
これらは皆静電気が起こしています。では静電気とは何か?
静電気とは、摩擦などによって一定の場所に集まり蓄えられた大量の電子の集まりのことです。
またバチっとくる現象を静電気と呼ぶこともあります。
誰もが静電気については中学校の理科で学んでいます。
じつは、人間を含めてあらゆるものは電気の源である電子を持っています。
すなわち物質の根源である原子の中では、中心にある原子核の周りを電子が高速で回っているからです。
参考「夏休みに克服しよう!イオンとは何か?中学校理科の難題です」
2.昔は電気と言えば静電気でした
電気が一般的に使われるようになったのは最近のことです。日本では明治期以降です。
それまで夜はろうそくやランプを利用していました。もちろん電気製品などありません。
とはいえ静電気の現象は、数千年前から知られていました。
磁石と同じく、離れた位置にある物体を引き寄せる働きです。
かつては磁力と静電気は同じものと考えられていました。どちらも原理が解明されるまでに千年以上の年月が経っています。
中でも琥珀(こはく)は静電気を帯びやすいことが経験的に知られていました。古代ローマでは琥珀を「electrum」と呼んでいたので、そこから英単語の電気「electricity」が生まれました。
3.静電気が起きる原理
静電気が起きる原理は次の通りです。
- 静止状態では、電気のプラスとマイナスは対になって収まっています。
- 服などの物質が擦れ合うことによりマイナスの電気を帯びた電子が、擦れあった相手側の物質へ移動します。どちらへ移動するかは、後述する帯電列に従います。
- ここでマイナスに帯電した部分と、プラスに帯電した部分ができます。これが物質としての静電気です。摩擦電気、摩擦帯電とも呼ばれます。
- 金属製のドアノブなど電気が流れやすい物体に触ると、瞬間的に大量の電子が流れます。これが現象としての静電気です。
4.静電気がたまりやすい物質
静電気がたまりやすい物質があります。それを並べたものを帯電列と呼びます。
以下の物質のうち、上の方にある物ほどマイナスに帯電しやすく、下にある物ほどプラスに帯電しやすく、そして真ん中ほど静電気をためにくい物質です。
- 塩化ビニル
- アクリル
- ポリエステル
- 金属
- 紙
- 麻
- 木綿
- 絹
- ナイロン
- 羊毛
- ガラス
- 人毛・毛皮
たとえばアクリルとポリエステルを擦ると、アクリルはマイナス、ポリエステルはプラスに帯電します。
ナイロンと羊毛では、ナイロンがマイナス、羊毛がプラスです。
ただしポリエステルとナイロンなら、ポリエステルがマイナスでナイロンがプラスです。
なお、真ん中あたりにある麻や木綿は静電気をためにくいとされています。
5.身近にある静電気を利用した機器
静電気は好ましからざる相手ですが、私たちの生活に利用されています。
コピー機
たとえばコピー機です。これは静電気がトナーと呼ばれる微粒子を引き付ける働きを応用しています。印刷機のレーザープリンターも同じです。
空気清浄機
また空気清浄機も物理的なフィルターの他に、集じん極板と呼ばれるものを内部に配置して、とても小さななチリを集める工夫が行われています。
日常的にも静電気を帯びた下敷きに綿ボコリが引き付けられるので、イメージしやすいでしょう。
スマホやATM
さらにスマホやATMなどのタッチパネルでは指先から流れる静電気を利用したタイプがあります。だから手袋をしていると反応しないことがあります。
ただしパソコンは、静電気除去対策が施されているので、壊れる心配はないようです。
6.動電気はあるのか
静電気があるならば、動電気もあるのでしょうか?
静の反対は動です。こちらは一般的な電気を意味します。つまり流れている電気です。
ただし用語として使われることはほぼありません。
静電気は雷と同じです
静電気は痛いですね。そもそも静電気の原理は雷と同じです。数万ボルトにも達することがあります。
とはいえ、バチッとくるのは一瞬なので、ほぼ害はありません。
それでもちょっとした注意で静電気は避けられます。何事も原理を知れば怖くありません。