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2018年1月25日、世界中に衝撃が走りました。中国でクローン技術を使ったサルが2匹生まれたのです。

これまでに、ほ乳類ではヒツジやブタのクローンが作られています。とはいえ、人間に近い霊長類(れいちょうるい)では初めてのことです。

もちろん、技術的にはすばらしいことです。医学の進歩に貢献するでしょう。

しかし、研究を進めるに際しては解決すべき課題もあります。中国だからこそできた?皮肉を込めて言うことができそうです。

そこでクローンとは何か?具体的な例を紹介します。また、クローン技術に対する現状の問題点などをまとめます。

中国でクローンのサルが生まれた

中国科学院の研究チームが、カニクイザルの体細胞から採取した核(遺伝子)を用いたクローンを誕生させました。

具体的な方法は以下のとおりです。

  1. 胎児の体細胞から取り出した核を、別のメスから採取した未受精卵に注入
  2. その卵79個を21匹のメスの子宮に移植

すると6匹が妊娠して、そのうちの2匹が無事に生まれました。生後約2カ月を経過して、いずれも健康状態は良いとのことです。

今回の注目点は、霊長類でクローン作成が成功したことです。

技術的にはすばらしいですが、「サルで成功するなら人間でもクローンができるのでは?」議論の飛躍が心配されます。

中国科学院では、現状においてクローン人間にまで研究を広げる予定はないそうです。しかし将来的には医学の進歩に貢献すると、研究者らは期待しているようです。

科学者はあくまでも科学の進歩を目指す、倫理や法律面は社会が考えるべき

同研究所の所長は、記者会見で発言したとのことです。

クローンとは

1.クローンとは何か

クローンとは、遺伝的にまったく同じ個体のことです。

理解を深めるために、クローンの具体例をあげてみましょう。

ソメイヨシノはクローンです

植物では挿し木接ぎ木などによって、クローン技術が古くから実用化されています。

身近な例では、サクラの代表でもあるソメイヨシノです。日本中にあるソメイヨシノは、いずれも遺伝的には同じです。これはクローンの一種です。

参考「サクラ咲く!なぜ日本人はサクラが好きなのでしょうか

ジャガイモもクローンです

ジャガイモなどのイモ類は、土の中でできたイモをさらに植えて増やしていきます。そういう意味では、ジャガイモもクローンです。

あとでくわしく解説しますが、受粉を経ない無性生殖で生まれていれば、同一の遺伝子を持つのでクローンです。

動物でもクローン実験が行われています

動物に関してもいくつかの実験が行われています。

最初は1891年、ウニの受精卵を分割して育てた記録があります。またカエルのクローンは1952年に成功しました。

ヒツジのドリー

世界が衝撃を受けたという意味では、ヒツジのドリーも有名です。

1996年、スコットランドにあるロスリン研究所において、体細胞から取り出した核を使ったクローンヒツジの作製に成功しました。ほ乳類では初めてのことです。

わずか6年で病気になり死んでしまったことから、クローンにすると寿命が短くなる?論争がありました。

とはいえ家畜と考えれば、6年は短くないでしょう。

人間の双子も定義上はクローンです

定義で考えれば、人間の一卵性双生児もクローンです。

もちろん人格的には別人物です。

双子は行動も似るとは言いますが、やること・考えることは基本的に違います。クローンを作ったとしても別個体として扱うべきです。

2.受精卵クローンと体細胞クローンがある

クローンには大きく2つの種類があります。

それは

  • 受精卵クローン
  • 体細胞クローン

です。

両者の大きな違いは、

  • 受精卵の核を使うのか
  • 体細胞の核を使うか

です。

受精卵クローン

受精卵クローンとは、

  1. ある程度細胞分裂が進んだ受精卵を個々の細胞に分割する
  2. 分割した1つの細胞を別に採取していた1つの受精卵へ注入する
  3. その受精卵をメスの子宮に移植し、出産させる

という方法で生まれるクローンです。

分割していても、受精卵の核であれば通常の発生と同じように成長します。

さらに受精卵の核は、消化器や循環器、手足など様々な器官に分化する能力があることが、すでによく知られています。

つまり、分割する前の受精卵と分割した受精卵に大きな違いはありません。

そのため、受精卵を個々に分割した細胞から正常な個体が生まれても不思議ではありません。

体細胞クローン

体細胞クローンは、

  1. 体細胞から採取した核を、受精卵の核と入れ替える
  2. その卵をメスの子宮へ移植し、出産させる

ことで生まれるクローンです。

体細胞は、すでに腕や足など特定の器官になっている細胞です。

たとえば腕なら、核が持つ遺伝子のうち、腕になる遺伝子のスイッチだけがオンになっているので、その細胞は腕の形や役割に特化します。

腕になった細胞の遺伝子の中にも他の器官になるための遺伝子がありました。しかし、他の器官に変化する働きが何らかの作用により止められています。

ならば足の細胞から核を採取し受精卵に移植して、本当に普通の個体が生まれるのか。足だけにならないのか。高等動物で本当にあり得るのか?そんな疑問が持ちませんか。

体細胞であっても同じ遺伝子セットを持っている、きっかけがあれば遺伝子が発現し、受精卵と同じく最初から発生が進む。

体細胞クローンの成功は、核が持つ能力を示す証拠になります。受精卵だと数が限られますが、体細胞なら資源は無限です。

3.無性生殖ならクローン

多くの動植物は、オス(雄花、おしべ)とメス(雌花、めしべ)の2つの性別があります。

生殖に際して精子と卵、それぞれが遺伝子を持ちよって、新しい個体である子供を作ります。

これを有性生殖と呼びます。

そのため親子であっても、半分は異なる遺伝子を持つことになります。

参考「オスとメスの違いは何か?有性生殖は望ましい繁殖方法なのか

一方で植物の接ぎ木、微生物の分裂などは無性生殖です。

植物では受粉、動物では受精を経ずに子孫を作っているなら無性生殖です。

この場合は遺伝子の追加、混ぜ合わせがないので、その親子は同一の遺伝子を持ち、クローンになります。
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クローン技術に対する問題点

自然界でもクローンはあります。

そのためクローン技術の研究は、科学の進歩に貢献するでしょう。したがって研究を制限することは控えるべきです。

とはいえ、研究を進める上ではクリアすべき課題も多いです。

1.倫理的な課題

現状において倫理上の問題があります。命の操作につながります。

「神の領域を冒すことにならないか?!」そんな批判もあります。

似た技術でもあるゲノム編集に関しても、受精卵の扱いには賛否両論あります。

参考「厚労省はゲノム編集の研究を規制するのか

失礼な言い方ですが、中国だからクローン技術を霊長類に応用できたのでしょう。

主要先進国であれば、特に宗教が生活に密着している文化であれば、サルを扱うことにためらいがあるからです。

ヒツジのドリーが生まれた際も、マッドサイエンティスト的な報道があったように記憶しています。

思えば試験管ベビー、いわゆる体外受精児も、当初危険視扱いされました。

とはいえ、今では多くの子供が体外受精によって生まれています。不妊治療のひとつとして治療を受けられる病院も多く、定着しているといえるでしょう。

今後、クローン技術もいつの間にか、体外受精のように私たちの生活に身近になっている可能性もあります。

参考「体外受精児が5万人!しかし胚培養士さん次第でもある

2.技術上の課題

クローンの成功率は高くありません。今回のサルに関しても、2/79です。

場合によっては奇形が生まれる可能性も否めません。残酷ではありますが、サルであっても動物なら殺処分できます。

しかしヒトの場合はどうでしょうか。クローンの妊娠中に先天性奇形や病気が見つかったなら、堕胎してよいのか?命の選別、優生思想ともつながり、倫理面での問題が出てくるでしょう。

不妊治療で普及している体外受精児に関しても成功率は高くありません。費用も高くなるでしょう。合法化されたとしてもリスクを抑えることができるのでしょうか。

3.絶滅種の復活に使ってよいのか

クローン技術は使い方によってメリットもあります。

家畜の分野では、生産性の高いウシやブタなどの大量生産が可能です。

ちょっと心配ではありますが、死んでしまったペットを生き返らせる?そんな可能性を秘めています。

一方で絶滅した、もしくは絶滅危惧種の復活に使えると期待されています。

実際にiPS細胞を使ったキタシロサイの復活を目指す研究が進んでいるようです。

参考「絶滅危惧種を人工的に救うことは正しいのか?技術は3つあります

ただし、絶滅種を安易に復活させてよいのでしょうか。映画『ジュラシックパーク』を期待してもよいのでしょうか。

自然に逆らうことをしてよいのか、そうした批判は常につきまといます。

ブタに人間の臓器を作らせる技術が本格化する

2018年1月29日、NHKのニュースにおいて、ブタの受精卵に人間のiPS細胞を注入し、ブタの体内で人間の移植用臓器を作る研究を進める旨の話がありました。

もともとブタは、人間に臓器の仕組みが似ているため、昔から実験動物として使われてきました。

そのため不足している移植用臓器をブタで作る話は検討されてきました。そして技術的な問題がクリアされてきたようです。

参考「ブタの心臓を人間に移植する時代になってきたようです

とはいえ実際に人間の臓器をブタの体内で作ってよいのか?上述の倫理的課題があります。

なぜなら人間の遺伝子を持ったブタが生まれる可能性があります。

そうすると、それはブタなのか人間なのか?映画のようにブタが言葉をしゃべることはないでしょうが、科学技術的には、何でもできる時代にはなっています。

クローンは必要なのか

人工知能AIによって仕事が奪われる?

ロボットが人間を襲う!

SFの話かもしれませんが、無人攻撃機などが実用化されています。

クローンを大量に作って戦場に送る?

そもそもクローンは何のために必要なのでしょうか。

生産能力の高い家畜を作り出せるメリットはあります。iPS細胞で研究されているように拒絶反応を起こさない臓器の開発なら許されるのでしょうか。

技術の進歩は止められませんが、研究を進めるには真剣な議論が必要です。

しかし、最終的には誰が決めるのでしょうか?

現実的に考えると、特許なども絡むので、早い者勝ちになりそうです。そのため日本の出遅れを心配する科学者も、少なくないようです。

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