
梅雨になって雨ばかり降るとイヤですね。
- 外へ遊びに行けない
- 洗濯物が乾かない
- 体中がベタベタする
- 蒸し暑い
楽しいことがありません。
しかし、梅雨の季節に雨が降らない空梅雨(からつゆ)になっても、いいことばかりではないのです。
空梅雨になると、どんな影響があるのでしょうか。
この記事では、
- 空梅雨とは何か
- 空梅雨が起きる原因
- 私たちの生活に与える影響
について解説します。
目次
空梅雨とは、特徴は?
空梅雨とは、梅雨なのに雨がほとんど降らない状態です。
1.気象庁による説明
気象庁は、空梅雨を次のように説明しています。
「梅雨期間に雨の日が非常に少なく、降水量も少ない場合をいう」
これを読むと、空梅雨は雨の日が何日以下で、雨の降った量が何mm以下という決まりではないことがわかります。
実は、梅雨に関する用語の意味は、けっこうあいまいです。
梅雨入り・梅雨明け・空梅雨を決める、数字を使ったはっきりとした基準はありません。
言い換えると、梅雨とは何か、正確に表現することは難しいのでしょう。
2.具体的な空梅雨の例
空梅雨とは、どんな天気のときのことなのでしょうか。具体例を挙げて、解説します。
2018年も初めは空梅雨だった
実は、2018年の沖縄や奄美地方では空梅雨と言われていました。
奄美は5月7日・沖縄は5月8日に梅雨入りしたのに、5月中にほとんど雨が降らなかったからです。
しかし、台風6号が6月16日に通過して平年並みの雨の量が降ったので、空梅雨は解消されました。
1994年渇水
深刻な空梅雨は、1994年(平成6年)にありました。1994年渇水と呼ばれています。
この年は梅雨時期の降水量が平年の半分以下で、九州から関東まで日本の広い範囲が水不足でした。
とくに大変だったのは福岡県の太宰府市で、翌年の5月まで295日間断水が続きました。
空梅雨の原因
空梅雨になる原因とは何でしょうか。大きく分けて3つあります。
1.太平洋高気圧の勢いが強い
空梅雨になる1番の原因は、太平洋高気圧の勢いが強いからです。
太平洋高気圧が梅雨前線を北へ押し上げて、日本に前線がかからないので空梅雨が起こります。
梅雨前線とは
梅雨の期間に雨が降る原因は、梅雨前線です。
梅雨前線が日本付近にかかっていると雨の日が続きます。
梅雨前線ができる理由
梅雨前線は、南の暖かい空気と北の冷たい空気がぶつかってできます。
太平洋高気圧は日本の南にあり、夏の暖かい空気を持つ高気圧です。
北にはオホーツク海高気圧という、春の冷たい空気を持った高気圧もあります。
季節が春から夏に変わるとき、この二つの空気がぶつかり、そこに前線ができます。
つまり、前線とは暖かい空気と冷たい空気がぶつかる場所のことなのです。
梅雨の季節にできる前線を梅雨前線といいます。
太平洋高気圧が強いと前線が北上してしまう
梅雨前線を作る太平洋高気圧の勢いが強いと、暖かい空気が南からどんどんせり出してきます。
そのせいで、冷たい空気と暖かい空気がぶつかる場所(前線)が、通常の位置より北になるのです。
北に前線ができると、平年なら前線がかかるはずだった南側の地域は夏の状態です。雨が降らず、晴れの日が続きます。
それで梅雨明けが早くなり、空梅雨になります。
2.太平洋高気圧の勢いが弱い
太平洋高気圧の勢いが弱い場合も、空梅雨になります。
梅雨前線が日本に来ない
太平洋高気圧の勢いが弱いと空梅雨になる理由は、梅雨前線が北上してこないからです。
梅雨前線ができ始めるころは太平洋高気圧の勢いが弱いので、北の冷たい空気が南下して日本の南の海上で前線ができます。
日本全体が梅雨に入る6月ごろになっても太平洋高気圧の勢いが強まらないとどうなるでしょうか。
梅雨前線は、日本の南側にあるままです。
このように、前線ができても太平洋高気圧に勢いがないと暖かい空気が南にせり出してこず、梅雨前線を日本まで押し上げられないので、空梅雨が起こるのです。
オホーツク海高気圧とぶつからない
太平洋高気圧の勢いが弱くて冷たい空気とぶつかれず、前線ができないので空梅雨になる場合もあります。
太平洋高気圧の勢いが弱いとオホーツク海高気圧とぶつからないので、前線ができないのです。
そもそも、梅雨前線ができるには、まず北の冷たい空気と南の暖かい空気がぶつからなくてはいけません。
ぶつからなければ前線ができない。前線ができなければ、空梅雨になるというわけです。
そのせいで、梅雨入りがいつだったかわからないことも、たまにあります。
3.偏西風の流れが変わる
偏西風(へんせいふう)が太平洋高気圧の動きや勢いのジャマをすると、空梅雨になることがあります。
偏西風とは
偏西風とは、地球の自転によって生まれる、日本の上空を西から東へ向かって流れる大きな空気の流れです。
いつも偏西風が吹いているので、日本の天気は西から東へと変わっていきます。
偏西風で空梅雨になる理由
偏西風は、通常であれば日本の上空を流れていますが、北や南にずれる、大きく曲がって蛇行(だこう)することもあります。
すると、前線を押し上げたり押し下げたり、時には前線を消滅させることもあるようです。
そのため、空梅雨が起こります。
なお、なぜ偏西風がずれたり蛇行したりするのか、よくわかっていません。
空梅雨が生活に与える影響
空梅雨になると、私たちの生活はどうなるのでしょうか。その影響を解説します。
1.水不足になる
空梅雨になって一番困るのは、水不足です。
日本の水道水は、ほとんどがダムに溜めた雨水に頼っています。梅雨の間に雨が降らないと、夏に使える水が用意できません。
水不足になると水道の勢いが弱くなったり、断水になったりします。
ダムに降らないと水不足は解消されない
梅雨に雨が降れば、水不足の心配はないのかといえば、それは違います。
水源地であるダムやその周辺に雨が降らなければ、雨水を貯められず、水不足は解消されないからです。
東京などの都市に大量の雨が降り続いても、水を貯める仕組みがありません。川から海へ流れるだけです。
水源地に雨が降らないと、空梅雨ではなくても水不足になります。
2.暑くなる
雨が降らないので、天気は毎日晴れです。とても暑い日が続きます。
太陽が照りつけるので、夜でも気温が下がりません。最低気温が25度以上の夜である熱帯夜も続きます。
太陽の光は梅雨の時期が一番強い
毎年6月22日ころが夏至です。
太陽の高さが1年で一番高くなるので、太陽の光は梅雨の時期が一番強くなります。
さらに昼の時間が一番長くなるため、地面や空気を冷やせません。
その上、空梅雨だと晴れが続くので、暑くなります。
3.野菜が育たなくなる
農業に影響が出ます。
中でも、畑に雨が降らないと野菜の生育が悪くなります。
不足しても輸入すれば、私たちが買い物するのに必要な量は用意できますが、それでも野菜の値段は高くなるでしょう。
4.スズメバチが大量発生する
雨が少なくて暑い毎日が続くと、昆虫が大発生しやすくなります。
農作物について悪さをする害虫も増えますが、街中で心配なのはスズメバチです。
空梅雨になると、スズメバチの巣が多くなると言われています。
空梅雨で気温が上がり、活発に動き回れるからです。
梅雨に雨が降ると虫が大発生しない理由は、活発に動けないからです。昆虫は変温動物なので、気温が下がると動けません。
しかし、空梅雨ならエサになる虫が多く、スズメバチも大量繁殖できるのです。
空梅雨でもよいことはある
空梅雨は、私たちに不便なことばかりかといえば、そうではありません。
空梅雨のメリットを解説しましょう。
1.経済的にはよいことが多い
空梅雨で天気がよく気温が高いせいで、レジャーや家電などにお金を使うので、景気が良くなる場合があります。
たとえば、天気がよければ、海や避暑地などの行楽地へ出かける人が増えるでしょう。
クーラーや夏服、アイスクリームや清涼飲料水、ビールもよく売れます。
空梅雨の晴天や暑さのせいで、消費活動が活発になるメリットがあるのです。
2.果物はよく育つ
太陽に当たる時間が長くなれば、果物がよく育ちます。
たとえば、モモやラズベリーは、空梅雨の方が豊作で、味もよくなるようです。
果物の多くは、雨に当たると表面がよごれたりカビが生えたりするので、商品としての価値が下がり、売れなくなってしまいます。
そういったデメリットが、空梅雨で解消されます。
3.コメ不足が解消された
1993年は冷夏だったのでコメがよく育たず不作でした。
国内にはコメの在庫がなくなり、海外から緊急輸入した時期です。
しかし、翌年の1994年は空梅雨でしたが天気がよかったのでコメの生育がよく豊作になり、コメ不足が解消されました。
梅雨に雨が降ることは大切です
空梅雨になるかならないかは、太平洋高気圧の強さで決まります。
しかし、その強さがどうやって決まるのか、よくわかっていません。
空梅雨の影響も、良いことがあれば、悪いこともあります。大切なのは、何ごともバランスです。